筲箕湾

筲箕湾（サウケイワン）

香港島の東部に位置する筲箕湾（サウケイワン、英語名：Shau Kei Wan）は、住宅と商業が混在する地区です。香港の行政区では東区に属し、北角、鰂魚涌、太古城などと共に、香港島東部の重要なエリアを構成しています。

交通の要衝

筲箕湾は、交通の要衝としての役割も担っています。香港名物の2階建て路面電車（トラム）の東側の始発・終着点であり、地下鉄港島線の駅やバスターミナルも設置されています。また、赤いミニバスの発着も多く、多様な交通手段が利用可能です。

トラムの終点周辺は、香港の他の地域と同様に、庶民的な商店街と住宅が密集しています。一方で、高台や海辺には近代的な高層住宅が立ち並び、対照的な景観を作り出しています。特に海辺の住宅地区は「アルドリッチベイ（愛秩序湾）」とも呼ばれており、その近代的な雰囲気が特徴です。

また、筲箕湾は香港島南部の大浪湾や石澳方面へのバス路線の出発点でもあります。石澳など鉄道が通っていない地域へ向かう人々にとって、地下鉄からバスへの乗り換え地点として重要な役割を果たしています。特に、石澳へは2階建てバスの9番が運行しており、休日にはレジャー客向けのミニバスも多く出発します。筲箕湾からミニバスを利用すれば、大浪湾にもアクセス可能です。ただし、大浪湾へ向かう乗客がいない場合は、大浪湾を経由せずに石澳へ直行することもあります。

歴史

「湾」という名前が示す通り、筲箕湾はかつて入り江であり、天然の良港として機能していました。「筲箕」とは、米を洗う際に使うザルのことであり、湾の形がそれに似ていることからこの名がついたとされています。明代に編纂された海図集にもその名前が記載されています。

明代には、台風でこの地にたどり着いた商船の乗組員が食料を求めたものの、誰も住んでいなかったため飢えに苦しんだという逸話から、「餓人湾」という俗称もありました。

18世紀中頃には、台風を避けるのに適した場所として漁民が集まるようになり、後に香港5大漁港の一つに数えられるほどに発展しました。また、近隣では恵州出身の客家人が花崗岩の採掘を始めました。

1841年の人口調査では、筲箕湾には約1200人が住んでおり、当時の香港島全体の人口の約28%を占めていましたが、その多くは水上生活者（蛋民）でした。1860年代には海賊が横行したため、香港総督の命令によりバラックが整理されました。

中華民国が成立した1911年には、人口は7000人に増加し、1920年代には簡単な工業も発展しました。第二次世界大戦後には、中国大陸から多くの難民が流入し、近隣の山あいにバラック住宅が密集した13の村が形成されましたが、その環境は劣悪でした。

1960年代から香港政府による大規模な区画整理事業と埋め立て工事が始まり、漁港としての役割は徐々に失われました。1976年にはバラック住宅街で大規模な火災が発生し、多くの住民が家を失いました。また、1983年にも別の火災が発生したことが、再開発の契機となりました。

政府は山を切り開いて造成を行い、耀東邨や興東邨などの公共住宅を建設し、現在の高層住宅群が形成されました。

教育機関

筲箕湾には、以下の教育機関があります。

専上学院
香港芸術学院
中学校
聖馬可中学
慈幼英文学校 (中学部)
筲箕湾官立中学
筲箕湾東官立中学
小学校
筲箕湾崇真学校
慈幼英文学校 (小学部)
筲箕湾官立小学
励志会梁李秀娯紀念小学
香港中国婦女会丘佐栄学校
中華基督教会基湾小学 (愛蝶湾)
中華基督教会基湾小学
愛秩序湾官立小学

このように、筲箕湾は歴史的な背景を持ちながらも、現代的な都市機能も兼ね備えた多様な魅力を持つ地域です。

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