箕冠城

箕冠城（みかぶりじょう）

箕冠城は、越後国に所在した日本の城郭です。現在の行政区分では新潟県上越市板倉区に位置しています。かつては旧中頸城郡板倉町の史跡に指定され、市町村合併後、上越市の史跡として現在に至っています。

地理と構造

この城は山城であり、妙高市の鳥坂城とは一つの山を隔てた位置にあります。標高242メートル、比高約160メートルの独立した山に築かれました。城域はおよそ東西400メートル、南北300メートルに及びます。山の東側を流れる大熊川と西側の小熊川が、自然の地形を利用した天然の外堀の役割を担っていました。

歴史

箕冠城の正確な築城年代は明らかになっていませんが、越後国の守護代を務めた上杉氏の重臣、大熊氏の居城として知られます。15世紀末に関東管領上杉氏の越後における所領を管理するために派遣された大熊氏によって築かれたとの説が有力視されています。

戦国時代に入ると、大熊氏は越後守護上杉氏に重臣として仕え、やがて長尾景虎（後の上杉謙信）の家臣となります。特に大熊朝秀は、長尾氏の家中において段銭方など、財政に関わる重要な役職を歴任しました。

1553年（天文22年）、十日町市の節黒城主・上野家成と、同じく十日町市の千手城主・下平吉長の間で領地を巡る争いが発生しました。上野家成が景虎の重臣である栃尾城主・本庄実乃を頼ったのに対し、下平吉長は大熊朝秀を頼ったことから、事態は複雑化。朝秀は、長尾氏の譜代家臣である与板城主・直江実綱（後の景綱）や本庄実乃といった有力者と対立するに至りました。

こうした領内での混乱は、長尾政景や北条高広といった有力家臣の謀反と相次いで発生したため、国主である景虎はこれに失望。突如、領国を捨てて出家することを宣言する事態となりました（第一次川中島の戦いの後、弘治2年（1556年）のこと）。

景虎が弘治2年（1556年）に出家・隠居の意向を表明したことを受け、朝秀はこれを機と捉えたのか、武田晴信（後の武田信玄）に内通。箕冠城を放棄して越中（現在の富山県）へ移り、武田氏と連携して越後への侵攻機会を窺う姿勢を見せました。

しかし、景虎が国主として復帰したことで越後侵攻の計画は頓挫します。朝秀は越中から信濃（現在の長野県）へ移り、1563年（永禄6年）には武田家に正式に仕官。武田四天王の一人、山県昌景の寄騎を務めた後、武田信玄の直臣となり、足軽大将に任じられるなど、その才覚を評価されました。信玄の跡を継いだ武田勝頼の代には、遠江国（現在の静岡県西部）の小山城代を務める重臣となっていたことが分かっています。

織田・徳川連合軍の猛攻により武田家が滅亡へと向かう中、多くの家臣が離反する事態となりましたが、朝秀は最後まで武田勝頼への忠義を貫きました。そして、1582年（天正10年）の天目山の戦いにおいて、勝頼と共に壮烈な最期を遂げたのです。

大熊朝秀が出奔した後の箕冠城に関する記録は乏しく、その後の動向は明らかではありません。朝秀の不在後まもなく廃城になったとする説がある一方、上杉家の対信濃方面における国境警備のための番城として利用され、上杉景勝が会津へ移封される1598年（慶長3年）まで存続したという見方もあります。

現在の状況

現在、城跡には往時を偲ばせる遺構が良好な状態で残されています。主なものとしては、曲輪（郭）、土塁、虎口（出入口）、堀切、横堀、そして水の手（水源地）などが確認できます。これらは独立峰という地形を巧みに利用した山城の構造を今に伝えています。

交通アクセス

えちごトキめき鉄道新井駅からバスに約23分乗車し、上越市板倉区菰立バス停で下車、そこから徒歩約15分で城跡に至ります。

参考文献

『上越市史叢書9 上越の城』　(新潟県上越市、2004)

関連項目

大熊朝秀
* 日本の城一覧

もう一度検索