箕面 (敷設艦)

敷設艦「箕面」

概要

「箕面」は、太平洋戦争末期に日本海軍が建造した敷設艦です。戦局の悪化に伴い、機雷敷設の必要性が高まったため、戦時標準船を改造して建造されました。しかし、竣工が遅れたため、実戦での活動はなく、終戦後は復員輸送に従事しました。

1944年末、日本海軍は本土決戦に備え、機雷敷設艦の増強を計画しました。しかし、既存の敷設艦はほとんどが戦没しており、大型艦は「常磐」しか残っていませんでした。そこで、急遽、戦時標準船の改造と敷設艇の急造が決定されました。「箕面」は、この計画に基づき、戦時標準船2D型を改造して建造されました。

「箕面」の原型となったのは、1944年9月2日に竣工した2D型貨物船「永城丸」です。この船を改造した「箕面」は、1944年11月29日に浪速造船所で起工しました。当初は1945年3月末の完成を予定していましたが、資材不足により工事が遅れ、進水は5月3日、竣工は8月5日となりました。竣工後、海上護衛総司令部部隊に編入されましたが、直後に終戦を迎え、実戦には参加しませんでした。

終戦後、「箕面」は復員輸送任務に従事しました。復員輸送終了後、貨物船として再利用することが容易でしたが、軍艦籍にあったため解体されました。

艦型

「箕面」は、元となった2D型戦時標準船と基本的に同じ構造ですが、機雷敷設のために様々な改造が施されました。

機雷搭載数は500個が要求されましたが、実際には船艙を改造した機雷庫に232個、上甲板に設置された敷設軌道に148個、計380個を搭載しました。敷設軌道は、片舷1条ずつが船尾楼両舷を貫いて艦尾に達する形で、敷設口には大きな張り出しが設けられました。船尾楼内の軌道部分は浸水時の浮力保持のために重要であったため、軌道の入口と敷設口には防水扉が設けられました。

船艙は3つに区切られ、浸水対策が施されました。さらに、中甲板が新設され、上下を仕切ることで下部機雷庫と上部機雷庫が設けられました。中甲板の後方には、兵員室、士官寝室、前部水測室などが設けられました。艙口（ハッチ）は、防水上の観点から鋼板で塞がれ、小さな機雷用の艙口が新たに設けられました。機雷の搭載にはデリックが使用される予定でしたが、取り扱いが難しいため、専用のスキッドビームとホイストが設置されました。

主機は、従来の2D型がレシプロ機関を搭載していたのに対し、「箕面」はタービン1基を搭載しました。これは2D型における初のタービン搭載船でした。ボイラーは石炭専焼でしたが、戦後の復員輸送の際には重油焚きに変更されました。

兵装として、艦尾に12cm高角砲1門が設置されました。25mm機銃は、艦首両舷に3連装が各1基、艦橋上両舷に連装が各1基、艦尾に単装が4挺搭載されました。レーダーは13号電探1基、ソナーは最新式の仮称五式一号水中聴音機1組が装備されました。また、探照燈1基が煙突後方に備えられました。

羅針艦橋の前面と上面には14mmの防弾板が装着され、天蓋にはコンクリート製の屏風が設けられました。これは機銃掃射から乗員を守るためのものでした。

「箕面」は、機雷を搭載しない場合は貨物船としても使用できるよう、従来のデリックと3カ所のカーゴハッチが残されました。

艦歴

1944年11月29日：浪速船渠にて起工。
1945年5月5日：「箕面」と命名。本籍を呉鎮守府と仮定。
1945年5月13日：進水。
1945年8月5日：竣工。
1945年8月25日：呉鎮守府第一予備艦に定められる。
1945年10月5日：除籍。
1945年12月1日：特別輸送艦に指定される。呉地方復員局所管。
1946年12月25日：特別輸送艦の指定を解かれる。内務省に移管。
1947年1月6日：占部造船田熊工場（因島）で解体工事開始。
1947年4月4日：解体工事終了。

艦長

艤装員長
堀口廣藏 少佐：1945年5月20日 - 1945年8月5日
艦長
堀口廣藏 少佐/第二復員官：1945年8月5日 - 1945年12月6日
井上團平 第二復員官：1945年12月6日 - 1946年3月1日
山上龜三雄 第二復員官：1946年3月1日 - 1946年3月7日
南部伸淸 第二復員官/第二復員事務官/復員事務官：1946年3月7日 - 1946年12月25日

同型艦

「箕面」と同様に改造された艦船は以下の通りです。

仮称艦名第1821号艦：本艦「箕面」
仮称艦名第1822号艦：2D型8番船。1945年2月1日起工。工事中止後、1948年6月7日に「乾進丸」として竣工したが、同年10月4日に遭難沈没。
永城丸：2D型戦時標準船を改造した特設敷設艦。1945年6月17日に戦没。
光隆丸：2E型戦時標準船を改造した特設敷設艦。1945年7月の空襲により着底。

参考文献

世界の艦船 増刊第47集 『日本海軍特務艦船史』海人社、1997年。
外山操『艦長たちの軍艦史』光人社、2005年。
(社)日本造船学会 編『昭和造船史(第1巻)』原書房、1981年。
福井静夫/纏め『終戦時の日本海軍艦艇』第二復員局、1947年。
福井静夫『終戦と帝国艦艇 わが海軍の終焉と艦艇の帰趨』光人社、2011年。
福井静夫『福井静夫著作集第10巻 日本補助艦艇物語』光人社、1993年。
福井静夫『写真 日本海軍全艦艇史』ベストセラーズ、1994年。
牧野茂、福井静夫 編『海軍造船技術概要』今日の話題社、1987年。
雑誌「丸」編集部『丸スペシャル 日本海軍艦艇シリーズ No.42 敷設艦』光人社、1980年。
雑誌『丸』編集部 編『写真　日本の軍艦 第14巻 小艦艇II』光人社、1990年。
Val, Jr. Scanlon 『U.S.S. Spadefish (SS-411) in World War II』Createspace、2012年。
アジア歴史資料センター（公式）(防衛省防衛研究所)『箕面引渡目録』。
アジア歴史資料センター（公式）(防衛省防衛研究所)『自昭和20年1月.至昭和20年8月 秘海軍公報/5月(2)』。
* 内海造船株式会社『個人投資家向け会社説明資料』、2008年。

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