箱式石棺

箱式石棺とは

箱式石棺は、縄文時代から古墳時代にかけて用いられた、板石を組み合わせて箱型にした石棺です。この石棺は、その名の通り、板状の石を箱のように組み合わせた構造が特徴で、遺体を納めるための埋葬施設として使われました。

歴史

箱式石棺は、縄文時代後期に青森県や長野県の遺跡で初めて出現し、縄文時代晩期には東日本一帯に広がりました。弥生時代に入ると、九州北部や中国西部を中心に前期から箱式石棺が見られるようになり、その後、近畿地方を除く西日本に広く分布しました。弥生時代の遺跡では、甕棺などの他の埋葬施設と合わせて共同墓地を構成していることが多く見られます。

古墳時代には、古墳の埋葬施設としても採用されましたが、古墳時代のものは特に「箱形石棺」と呼ばれることもあります。

特徴

箱式石棺の最大の特徴は、その構造にあります。板石を組み合わせることで、内部に遺体を安置するための空間を作り出します。この構造は、石棺の耐久性を高め、遺体を風雨や土砂から守る役割を果たしました。

主な遺跡

箱式石棺が出土した主な遺跡は以下の通りです。

縄文時代

水上(2)遺跡 - 青森県西目屋村：縄文時代後期初頭の石棺墓が18基出土。
原山支石墓群（原山ドルメン） - 長崎県南島原市：縄文時代終末期の支石墓群で、支石の下に屈葬用の短い箱式石棺が付属。
大野台支石墓群 - 長崎県佐世保市：原山と同様、長崎県の特徴である下部に箱式石棺を伴う。

弥生時代

土井ヶ浜遺跡 - 山口県下関市：弥生時代前期から中期の墓地遺跡で、6体の人骨が納められた石棺が確認。
吉野ヶ里遺跡 - 佐賀県神埼郡吉野ヶ里町：3500基以上発見された墓のうち、11基が石棺墓。

古墳時代

安土瓢箪山古墳 - 滋賀県近江八幡市：4世紀中頃の前方後円墳で、前方部から2基の箱式石棺が確認。
亀塚古墳 - 大分県大分市：5世紀初頭の前方後円墳。墳頂にレプリカが展示。
三ツ城古墳 - 広島県東広島市：5世紀前半の前方後円墳。
野毛大塚古墳 - 東京都世田谷区：5世紀前半の帆立貝形古墳で、4つの埋葬施設のうち最後に作られた。
金鈴塚古墳 - 千葉県木更津市：終末期の前方後円墳で、未盗掘の状態で、石棺の内外から大量の副葬品が出土。

まとめ

箱式石棺は、縄文時代から古墳時代にかけて、日本の各地で用いられた重要な埋葬施設です。その構造や分布から、当時の人々の生活や文化、埋葬の習慣を知る上で、非常に重要な手がかりとなります。

参考文献

田中琢・佐原真『日本考古学事典』三省堂、715頁、2002年5月
田村晃一・合田芳正　『考古学探訪の基礎用語』山川出版社、112頁、2000年7月

関連項目

古墳
石棺
ブラフマギリ
弥生時代の墓制

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