箱根丸 (初代)

箱根丸の歴史と航海

箱根丸（はこねまる）は、日本郵船が所有し運航していた貨客船であり、その歴史は大正後期から昭和初期にかけての欧州航路での活躍に由来しています。この船は、姉妹船として知られる筥崎丸、榛名丸、白山丸と共に、頭文字がHの文字を持つことから「H型船」と分類され、その特徴的な設計は当時の海運技術の進化を象徴しています。

背景と建造の経緯

日本郵船は、第一次世界大戦中にドイツ海軍による攻撃で、八坂丸、宮島丸、平野丸の3隻を失いました。このような背景から新たに1万トン級の貨客船の建造を決定し、三菱造船長崎造船所に発注しました。この計画の一環として、箱根丸は1920年7月12日に起工し、翌年の1921年10月31日に竣工を迎えます。

箱根丸は、諏訪丸級を基にした設計で、三菱製のパーソンズ式タービン機関を搭載していました。また、同じ形状のストックボートとして白山丸も建造されました。

船歴と航海

箱根丸は、1921年11月29日に神戸を出航し、ロンドンに向けて初航海を果たしました。その後、約20年にわたり欧州航路での運航に従事し、47回の航海を行いました。1940年5月30日には最後の欧州航海を行った後、同年12月から翌1941年にかけてボンベイ航路の運航に転換し、さらに日本人の引揚げに活用されました。

しかし、1942年の8月28日、船は海軍に徴用され、一般徴用船としての運航を開始します。10月19日に一度解傭された後、軍の指示で陸軍の輸送任務に転用されました。11月27日、箱根丸は高雄から門司へ向かう途中、台湾海峡で空襲を受けることとなり、右舷の中央部に至近弾を受け、浸水が発生しました。この影響で航行が不可能となり、17時15分に沈没してしまいました。乗客832名の中で、人的な被害は報告されませんでした。

沈没地点は烏嶼南沖15km地点で、緯度25度04分、経度119度40分付近です。この事件は当時の海運業界に大きな影響を与え、箱根丸は多くの歴史的意義を持つ船であったことが理解されます。

参考文献と関連項目

箱根丸に関する情報は、船舶技術協会の『船の科学』や造船協会の『日本近世造船史 附図』などの資料に記載されています。また、大日本帝国海軍特設艦船データベースや戦没した船と海員の資料館でも詳細な情報を確認することができます。箱根丸の歴史は日本郵船の海運の発展と密接に関連しており、その時代の海事史を語る上で欠かせない存在となっています。

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