箱根宏

箱根 宏（はこね ひろし）

箱根宏氏（1919-1987）は、茨城県土浦市において、実業家としての成功を経て市政のリーダーとなった人物です。第11代土浦市長として初めて市政の舵を取り、後に一度の挫折を乗り越え、第14代、第15代と再び市長職に就任。通算3期にわたり、土浦市の発展に貢献しました。

若き日と学業、そして戦時下の経験

茨城県に生を受けた箱根氏は、旧制水戸高校を卒業後、東京帝国大学経済学部へと進学。当時のエリート教育を受け、経済学を修めました。大学卒業後は、戦時下の日本において軍需省の総動員局に勤務しました。その後の経歴には軍務があり、短期現役海軍主計科士官として海軍経理学校に入学。1945年に卒業し、海軍主計少尉に任官しましたが、終戦により間もなく軍務を解かれました。

実業界での実績と教育への関与

第二次世界大戦終結後、箱根氏は実業家としての道を歩み始めます。1950年には土浦土木建築工業の代表取締役に就任し、経営者としての手腕を発揮しました。建設業界で実績を積み重ね、1966年には同社の社長に昇進し、地元経済において確固たる地位を築きました。また、箱根氏は実業界での活動と並行して、後進の育成にも熱心でした。土浦第一高等学校および土浦第三高等学校で教鞭を執るなど、教育分野にも貢献し、地域の若者の育成にも尽力しました。

政治家への転身と最初の市長任期

実業家として成功を収めた箱根氏は、1971年に政治の世界へと足を踏み入れます。土浦市長選挙に立候補し、当選。第11代土浦市長として市政を担うことになりました。最初の任期において、箱根市長は地域の産業振興に重点を置き、積極的に企業の誘致活動を展開しました。新たな企業を呼び込むことで、雇用機会の拡大や税収の増加を図り、土浦市の経済活性化を目指しました。

不祥事による挫折

しかし、市長としての活動が順調に進む中、箱根氏の政治キャリアは突然の危機に直面します。1973年、市が計画していた国民宿舎の建設事業を巡る贈収賄事件に関与したとして、箱根氏は逮捕される事態に至りました。この責任を負い、市長職を辞任することを余儀なくされました。その後、裁判において有罪判決を受け、執行猶予付きの刑が確定しました。この事件は、箱根氏の公人としての経歴において大きな汚点となりました。

困難を乗り越えての政界復帰

一度は政治の舞台から姿を消した箱根氏でしたが、その政治への情熱が尽きることはありませんでした。約8年の時を経て、再び土浦市政への復帰を目指します。そして1981年、土浦市長選挙に再び立候補し、多くの市民の支持を得て見事に当選。第14代土浦市長として、再び市政のトップに返り咲きました。この復帰は、箱根氏の強い意志と、市民からの根強い期待を示すものでした。

科学万博に向けた都市基盤整備

二度目の市長任期において、箱根氏が特に力を注いだ政策の一つが、1985年に開催された国際科学技術博覧会（つくば万博）に関連する都市基盤の整備でした。土浦市は万博会場に近接しており、多くの来場者が利用する玄関口の一つとなることから、交通アクセス網の改善、駅周辺の整備、都市機能の拡充など、積極的なインフラ投資を行いました。これらの整備は、万博の円滑な運営に貢献するとともに、その後の土浦市の都市発展の基礎となりました。

三選後の突然の逝去

万博閉幕後の1985年12月、箱根氏は三度目の市長選に勝利し、第15代土浦市長として再び市民からの信任を得ました。しかし、その任期半ばである1987年10月6日、箱根氏は突然この世を去りました。享年68歳でした。任期中の訃報は、土浦市政に大きな影響を与えました。

結び

箱根宏氏の生涯は、実業界での成功から政治家へと転身し、市政の発展に尽力する一方で、贈収賄事件による挫折、そしてそこからの劇的な復帰と、まさに波乱万丈と言えるものでした。事件という負の側面は拭えませんが、特に二期目以降に推進した科学万博に関連する都市基盤整備は、今日の土浦市の姿にも少なからず影響を与えています。その功罪を含め、箱根宏氏という人物は、土浦市の近現代史において記憶されるべき存在と言えるでしょう。

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