築港町駅

築港町駅（廃駅）

和歌山県和歌山市築港に位置していた築港町駅は、かつて南海電気鉄道和歌山港線に設けられていた鉄道駅です。多くの駅がそうであるように、この駅にも時代と共に変化を遂げた歴史がありましたが、最終的には2005年（平成17年）11月27日をもって廃止され、その役割を終えました。

歴史的変遷

この駅の始まりは、現在の「築港町駅」という名称ではありませんでした。その前身は、初代和歌山港駅として1956年（昭和31年）5月6日に開業しました。当時の目的は、南海汽船への連絡を図ることにあり、駅の所在地は現在の築港6丁目あたりに設けられていました。

初代駅は、現在の築地橋駅方面から線路が分岐する形で設けられており、旅客を扱うためのホームは現在の和歌山港線が通る線路沿いに置かれていました。一方、貨物の取り扱いについては、そこからさらに岸壁側へと分岐していく専用の線路が敷設され、貨物用の駅が設けられていました。このように、旅客と貨物とで異なった取り扱いが行われていたのが特徴です。

大きな転機となったのは、1971年（昭和46年）のことです。この年、フェリー乗り場が移転したことに伴い、現在の和歌山港駅へと路線が延伸されました。これに合わせて、初代和歌山港駅は名称を築港町駅へと改めると同時に、元の位置よりも築地橋駅寄りにあたる、現在の築港4丁目付近へと移設されることになりました。駅名と場所が変更され、新たなスタートを切ったのです。

しかし、時代の流れと共に利用状況などが変化する中で、築港町駅は同じ和歌山港線にあった久保町駅、築地橋駅と共に廃止されることが決定されました。そして、1956年の開業から約半世紀の時を経て、2005年11月27日に廃駅となりました。

駅構造と現状

廃止された時点での築港町駅は、単式ホーム1面1線というシンプルな構造を持つ地上駅でした。特筆すべき点として、この駅は無配置駅、すなわち駅員が常駐しない無人駅であり、駅舎や改札口といった施設も設けられていませんでした。そのため、利用者はホームへ直接出入りすることが可能な開かれた構造でした。

駅が廃止された後、その敷地からはホームなどの構造物は撤去されました。現在、駅があったことを示す直接的な痕跡はほとんど残されていません。周辺の敷地がわずかに広くなっている場所が、かつて駅が存在した名残と言える程度です。

和歌山港線の他の廃駅である久保町駅や築地橋駅の跡地では、旧ホームの位置に電柱が立てられているといった状況も見られますが、築港町駅の旧ホーム跡地にはそのような障害物がなく、現在は平面の更地となっています。

利用状況と周辺環境

廃止される以前の築港町駅の利用状況については、日ごとの平均乗降人員に関する資料が存在します。

駅の移設後の所在地は、市堀川と築地川という二つの川に挟まれた中州の中央付近でした。駅周辺の環境としては、北側には物流倉庫や事業所などが多く集まるエリアが広がっていました。一方、南側には和歌山港へと繋がる道路が通じていました。周辺の主な施設や道路としては、和歌山県道16号和歌山港線や和歌山築港郵便局などがありました。

隣接していた駅は、和歌山市駅から和歌山港駅に向かって、築地橋駅、築港町駅、そして和歌山港駅という並びでした。

築港町駅は、和歌山港と市街地を結ぶ和歌山港線の一駅として、その役割を終えましたが、かつては港への重要なアクセス拠点であり、また時代と共に姿を変えた歴史を持つ駅でした。

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