篠田守男

篠田守男（1931年3月13日 - ）は、日本の現代彫刻界における重要な作家の一人です。東京都目黒区に生まれ、青山学院大学文学部英米文学科に在籍していましたが、中退後、独自の芸術の道を歩み始めます。

彼の芸術家としてのキャリアは、1952年に始まります。国立産業工芸試験所（後の通商産業省）に勤務しながら、独学で彫刻制作に取り組みました。昼間は公務に携わりながら、夜間は創作活動に没頭する日々を送ったのです。その地道な努力は実を結び、1956年にはモダンアート展で受賞を果たします。

1963年には、公務でアメリカ合衆国へ長期派遣される機会に恵まれました。この期間、シカゴ美術館附属美術大学で研鑽を積み、国際的な視野と高度な技術を身につけます。帰国後、その才能はさらに開花し、1966年には日本の彫刻界において権威ある賞の一つである高村光太郎賞を受賞しました。同年に開催された第33回ヴェネツィア国際ビエンナーレでは、日本代表として参加し、国際舞台でその名を広く知らしめました。

1967年、国立産業工芸試験所を退職後は、後進の育成にも力を注ぎます。カリフォルニア大学ロサンゼルス校客員教授、筑波大学教授、金沢美術工芸大学教授など、国内外の大学で教鞭を取りました。彼の指導を受けた学生の中には、著名な俳優の六平直政氏（武蔵野美術大学時代）や芸術家の土佐信道氏（筑波大学時代）など、各界で活躍する人材も輩出しています。

篠田守男氏の作品で最も知られるのは、鋼鉄線の張力と圧力を用いて金属塊を中空に固定する「TC（Tension and Compression）」シリーズです。このシリーズでは、素材の特性を巧みに利用し、重力や空間との緊張感あふれる造形が特徴です。繊細でありながら力強い、彼の独特の表現方法は、見る者に深い印象を与えます。金属という硬質な素材を用いながらも、その作品からは、軽やかで、時に詩情さえ感じさせる独特の雰囲気を醸し出しています。

彼は、素材と空間、そして力との対話を追求し続け、独自の彫刻表現を確立しました。その作品は、単なるオブジェとしてではなく、見る者と対話し、思考を促す存在として、現代彫刻史に重要な足跡を残しています。伝統的な技術を踏まえつつ、常に新しい表現に挑戦し続ける篠田守男氏の芸術は、これからも多くの人々を魅了し続けることでしょう。

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