簗瀬一雄

簗瀬一雄

簗瀬一雄（やなせ かずお、1912年5月5日 - 2008年9月14日）は、昭和から平成にかけて活躍した日本の国文学者です。豊橋技術科学大学名誉教授として、後進の育成にも尽力しました。

生涯

東京に生まれた簗瀬一雄は、早稲田大学国文科を卒業後、研究の道へ進みます。1960年には「俊恵及び長明の研究」で法政大学より文学博士号を授与されました。その後、豊田工業高等専門学校教授を経て、1978年に豊橋技術科学大学教授に就任。1982年に定年退官後は、同大学の名誉教授となりました。

愛知県在住時代（1958年～1972年）には、研究活動と並行して、未刊古典の翻刻私家版である「碧冲洞叢書」を謄写版で100冊発行しました。この叢書は、中世文学研究において貴重な資料として高く評価されています。

また、簗瀬一雄は歌人としても活動し、数多くの歌集を刊行しました。その作品は、繊細な感性と深い教養に裏打ちされたもので、多くの人々に感動を与えました。

業績

簗瀬一雄は、中世日本文学、特に鴨長明や俊恵の研究において多大な功績を残しました。彼の研究は、文献の精密な読解と、歴史的文脈への深い理解に基づいています。

著書としては、『鴨長明の新研究』、『方丈記解釈大成』、『説話文学研究』などが挙げられます。また、全9巻に及ぶ『簗瀬一雄著作集』は、彼の研究成果を網羅的にまとめたもので、研究者にとって必携の書となっています。

校訂・編纂の分野でも、『鴨長明全集』や『方丈記』の注釈など、数多くの業績があります。特に、角川文庫版の『方丈記』は、広く読まれており、古典文学への入門書としても親しまれています。

「碧冲洞叢書」は、中世文学研究に貴重な資料を提供し、学術的に高く評価されています。内容は多岐にわたり、中世散佚歌集、歌人全歌集、書簡集、宝物集、物語、説話、日記、注釈書などが含まれます。

著作一覧

鴨長明の新研究 (1938)
萬葉集の鑑賞 (1938)
國学入門 (1942)
中世日本文学序説 (1943)
雨月物語新釈 文法詳解 (1954)
歌集 淡き銀河 (1957)
歌集 白真弓 (1970)
方丈記解釈大成 (1972)
説話文学研究 (1974)
無名抄全講 (1980)
歌集 伊佐々川 (1981)
方丈記 古典を読む (1981)
本居宣長とその門流 (1982-1990)
糺の森 随筆集 (1985)
歌集 花残月 (1985)
そよぐ梢 第二随筆集 (1989)
社寺縁起の研究 (1998)
長寿楽 随筆集 (1999)

碧冲洞叢書（主なもの）

中世散佚歌集の研究
俊恵法師全歌集
近世歌人書簡集
校合二巻本宝物集
式子内親王全歌集
金沢文庫所蔵今鏡断簡
古巣物語
異本方丈記

簗瀬一雄は、研究者としてだけでなく、教育者、歌人としても多才な才能を発揮し、日本の古典文学研究に大きく貢献しました。その業績は、今日でも多くの人々に影響を与え続けています。

もう一度検索