米切手

米切手とは

米切手（こめきって）は、江戸時代に蔵屋敷が発行した米の保管証明書です。これは、蔵に預けられた米の所有者に対して発行されるもので、別名、蔵米切手（くらまいきって）とも呼ばれていました。米切手は、単なる保管証明書に留まらず、当時の経済活動において重要な役割を担うことになります。

米切手の概要

米切手は、蔵屋敷を運営する商人の経済力を背景に発行され、当時、社会からの信頼が厚いものでした。初期の米切手は、発行から30日以内に米の引き出しが義務付けられていました。また、米切手は小型で持ち運びが容易であったため、現物取引の代替として正米市場（しょうまいしじょう）での売買に使用されました。

米問屋は、蔵屋敷から米を引き取るために米切手を購入していました。しかし、米切手は次第に「流通証券」としての性質を強め、為替の代わりや転売にも利用されるようになりました。この変化は、米切手が単なる証明書から、決済や投資の手段へと進化したことを示しています。

米切手の問題点と幕府の対応

一部の藩の蔵屋敷では、米の引き取りに来る商人が少ないという問題がありました。そこで、藩は翌年以降の収穫分の米切手を前倒しで発行し、財政赤字を補う手段として利用しました。この結果、市場には実際の米の在庫を上回る量の米切手が流通し、米切手の不渡りリスクが高まりました。

こうした状況に対し、江戸幕府は米切手の発行規制や商人保護策を講じました。明和2年（1765年）には、米切手を闕所処分（没収）の例外とし、安永2年（1773年）には不渡りとなった米切手を銀座で買い取る「官銀買上法」が制定されました。さらに、天明2年（1782年）には呉服所御用の後藤家を「米切手改兼帯役」に任命し、米切手に関する訴訟法制も整備しました。

これらの施策は、米切手市場の安定化を図るものでしたが、根本的な解決には至りませんでした。

米切手の終焉

幕府崩壊後、明治政府は、自らの正規通貨の流通を妨げることを懸念し、明治4年4月4日（1870年5月22日）の太政官達で米切手の流通を禁止しました。これにより、米切手は歴史から姿を消すこととなりました。

米切手は、江戸時代の経済活動において、重要な役割を担いました。しかし、その過剰な発行や投機的な利用は、経済の混乱を招く要因ともなりました。米切手の歴史は、金融商品の規制や市場の安定化の重要性を示唆するものであり、現代の金融市場にも通じる教訓が含まれています。

関連項目

• - 倉庫証券
• - 堂島米会所
• - 蔵屋敷
• - 帳合米取引
• - 旗振り通信
• - 本間宗久
• - 先物取引
• - 日本国債

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