永

「永」（えい）とは、もともと永楽通宝（永楽銭）の略称として使われていました。また、そこから派生して、貨幣の計算単位としても用いられるようになりました。江戸時代には、1両の1000分の1を意味する単位として定着しました。

永の起源と変遷

古代の日本では、税として稲を納める際、穎稲（えいとう）と呼ばれる形で納めることが規定されていました。しかし、中世に入ると、穎稲の代わりに貨幣で納税を行う代銭納が登場します。この時、穎稲の代わりに納める貨幣を穎銭（えいせん）、または単に「穎」（えい）と呼ぶようになりました。

一方、室町時代以降、明から永楽通宝が日本に流入すると、特に東国を中心に広く用いられるようになりました。この地域では、代銭納を含めた貨幣による納税の際に、永楽通宝で徴収されることが多かったため、永楽通宝を単に「永」と呼ぶ慣習が生まれました。

その後、同じ「エイ」と読む「穎」と「永」が混同され、穎銭の意味でも「永」が使われるようになりました。

江戸時代における「永」

徳川氏が関東に移封された後、同地方の畑作地帯では石高制の導入が困難であったため、従来の永高によって年貢額が示されました。江戸幕府成立後の慶長13年（1608年）には、永楽通宝の流通が禁止されるとともに、永楽通宝1貫文（1000枚）が鐚銭4貫文、そして金1両に相当するという換算規定が設けられました。

寛永通宝の発行後、永楽通宝はほとんど流通しなくなりましたが、永高による年貢額の表示は継続されたため、「永」は1両の1000分の1を示す計算単位として使われ続けました。永高で示された年貢額は、現行の金貨や銅銭で納税されることになりました。

「永」は、金貨単位の「朱」未満の端数の計算にも用いられました。幕府が発行した1朱未満の金貨単位の金属貨幣は存在しませんでしたが、藩札では1朱未満の金貨単位の金額が「永銭～文」の形で表示された例があります。また、地方貨幣の金属貨幣では、「永銭～文」の形ではないものの、1朱未満の金貨単位の金額として「琉球通宝半朱」のような例も見られます。

このように、「永」は、永楽通宝の略称から始まり、貨幣単位、そして年貢額の表示単位として、江戸時代を通じて重要な役割を果たしました。その使用は、当時の貨幣経済や税制を理解する上で欠かせない要素となっています。

参考文献

滝沢武雄「永」『国史大辞典 2』（吉川弘文館 1980年） ISBN 978-4-642-00502-9
門前博之「永」『日本歴史大事典 1』（小学館 2001年） ISBN 978-4-095-23001-6

関連項目

* 永取

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