米比相互防衛条約

米比相互防衛条約

米比相互防衛条約（Mutual Defense Treaty between the Republic of the Philippines and the United States of America）は、1951年にアメリカ合衆国とフィリピンの間で締結された軍事同盟に基づく安全保障の条約です。この条約は有効期限がなく、両国の相互防衛の約束を明文化した重要な合意となっています。

条約の成立背景

1945年2月、冷戦が始まり、ヨーロッパではソビエト連邦の影響力が強まっていきました。この状況の中、1949年に中華人民共和国が成立したことから、アジア諸国が連続して共産化する可能性が懸念される「ドミノ理論」が台頭しました。さらに1950年6月には朝鮮戦争が勃発し、アメリカはアジアにおいて共産主義を封じ込める必要が生じました。

1946年7月にフィリピンが独立した後、アメリカとの間で軍事基地協定と軍事援助協定が締結され、アメリカ軍がフィリピンに駐留することとなりました。しかし、正式な相互防衛条約が締結されることで、両国は西部太平洋地域における安全保障を強化する意向を示しました。また、1954年から1977年までは、反共主義の集団防衛機構として東南アジア条約機構も存在しました。

冷戦から対テロ戦争へ

1989年12月の冷戦終結後、アメリカ合衆国は現在の安全保障環境に適応するため、軍事政策の見直しを行いました。1991年12月のソビエト連邦の崩壊は、依存していることが多かった軍事基地協定の再考を促しました。特に、1991年にピナトゥボ山が噴火し、アメリカ軍基地が被災したことから、これらの基地の有効期限延長がされず、アメリカ軍はフィリピンから撤退することが決定されました。最初にクラーク空軍基地が閉鎖され、続けて1992年にはスービック海軍基地も撤収しました。この時期には、アメリカの影響力が著しく減少しました。

撤収後、南シナ海での中国の領有権主張が活発化し、フィリピンが権利を主張する南沙諸島でも緊張が高まりました。1998年には「訪問米軍に関する地位協定」が締結され、その後、1999年5月には共同軍事演習が再開されました。

2001年には、アメリカ同時多発テロ事件が発生し、その影響でフィリピンのグロリア・アロヨ大統領は再びアメリカと協力し、クラーク・スービックの基地の利用を許可しました。その後、アメリカ軍がフィリピン国内でのテロ対策に参加し、特にミンダナオ島での活動が目立ちました。

2016年には、アメリカ軍がフィリピンの5つの基地を使用するための協定が結ばれ、これにより両国の軍事協力は新たな段階を迎えました。この協定は、中国の人工島建設などに対抗する目的も含まれています。

現代における影響

2017年5月、フィリピン軍はマラウィ市においてアブ・サヤフとの交戦状態に突入しました。この際、フィリピン政府はアメリカに支援を要請し、合わせてアメリカの特殊部隊がフィリピン軍に協力しました。米比相互防衛条約は、冷戦から現在に至るまで両国の安全保障において重要な役割を果たしてきました。国際情勢が変化する中、相互防衛の枠組みは今後も進化していくことが期待されています。

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