粉瘤腫

粉瘤腫（ふんりゅうしゅ）についての詳しい解説

粉瘤腫、または粉瘤とは、皮膚内部に老廃物が溜まり、良性の嚢胞として形成される病変の総称です。この病変は、一般的に新陳代謝によって表皮から剥がれるはずの垢などが皮膚の深層にたまることにより発生します。日本ではアテローマやアテロームという名称で呼ばれることもありますが、英語では正式に「表皮嚢胞（epidermal cyst）」または「類表皮嚢胞（epidermoid cyst）」と表記されます。粉瘤腫は新生物ではなく、良性の嚢胞性病変という位置づけです。

粉瘤腫の概要

皮膚の上皮組織である表皮は、基底層で細胞分裂を行い、外側に押し出される過程でケラチンを含む死細胞が層状に積み重なります。その結果、垢として剥がれ落ちるのが通常の新陳代謝です。しかし、皮膚の内部で重層扁平上皮が形成されると、ケラチンを含む老廃物がその内側に蓄積されます。これが粉瘤腫の原因です。皮膚表面には「臍」と呼ばれる開口部が生じることが多いですが、この部分が固化した老廃物で塞がれているために、老廃物は外に排泄されません。このため、手術で摘出した際には、老廃物を含む袋状の構造となります。

原因

粉瘤腫は、毛根を形成する組織のひとつである毛漏斗に起因することが多いと考えられています。この場合、毛包全体が毛漏斗の細胞に変化することで粉瘤腫が形成されます。一方で、皮膚に外的な傷があった場合、表皮や付属器の細胞が真皮内に封入されて外傷性粉瘤を形成することもあります。特に手のひらや足の裏で見られることが多いです。

症状

粉瘤腫の初期段階では、皮膚の下にしこりが認められる程度で、外見にはほとんど影響がありません。そのため、多くの人は自覚症状が少ないですが、時間が経つにつれて腫瘤が大きくなります。この段階で無理に老廃物を外へ押し出そうとすると、感染の危険が増します。感染が発生すると、炎症を伴って痛みや化膿の症状が現れます。特に内側に破裂して膿が体内に漏れると、腹膜炎や胸膜炎などの重篤な合併症を引き起こす可能性があるため、注意が必要です。

進行速度には個人差があり、数十年にわたりサイズがほとんど変わらない場合や、炎症も伴わないケースもあります。腫瘤は顔、首、背中、耳の裏にできやすいですが、実際には皮膚のどの部位でも発生する可能性があります。女性の性器等に現れることもあります。
また、粉瘤腫に類似した病気として皮様嚢腫や側頸嚢腫、耳前瘻孔などがあります。これらの疾患との鑑別は、腫瘍のできる部位によって行う必要があります。

治療法

粉瘤腫の診断には皮膚科、外科、形成外科が適しています。基本的に粉瘤腫は良性ですが、感染時には抗菌薬を使用して炎症を抑えることが重要です。切除は患者の選択に委ねられますが、手術によって根本的な解決が可能ですいう一般的には、局所麻酔を行い、袋ごと切除する方法がとられます。

小型の粉瘤腫については、くりぬき法と呼ばれる低侵襲の施術法もありますが、完全に再発を防ぐためには袋の除去が必要です。感染が確認されている場合は、手術による切開と洗浄を行い、その後に切除が行われることが一般的です。治療を受けることで、粉瘤腫による健康影響を軽減することができます。

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