粗面小胞体

粗面小胞体（Rough Endoplasmic Reticulum：rER）

粗面小胞体は、細胞内小器官の一つであり、その名の通り、表面にリボソームが付着している小胞体のことを指します。このリボソームの存在が、粗面小胞体の特徴的な外観を形作っています。

構造と特徴

粗面小胞体は、核膜の外膜と連続しており、細胞核のすぐ外側に位置しています。リボソームはRNAを多く含んでいるため、粗面小胞体は好塩基性の染色液によく染まります。このため、組織切片を顕微鏡で観察する際に、粗面小胞体の存在を容易に確認することができます。

機能

粗面小胞体の最も重要な機能は、タンパク質の合成です。特に、以下のような種類のタンパク質の合成に関与しています。

1. 分泌タンパク質：細胞外へ分泌されるタンパク質（例えば、ホルモン、消化酵素、抗体など）は、粗面小胞体上のリボソームで合成されます。
2. 膜タンパク質：細胞膜や細胞内小器官の膜に組み込まれるタンパク質も、粗面小胞体で合成されます。
3. リソソーム酵素：細胞内の分解を担うリソソームで働く酵素も、粗面小胞体で合成されます。

これらのタンパク質は、リボソームで合成された後、粗面小胞体の内部に輸送されます。粗面小胞体の内部では、タンパク質のフォールディング（立体構造の形成）や修飾が行われ、その後、ゴルジ体へと輸送されます。ゴルジ体では、タンパク質のさらなる修飾や選別が行われ、最終的にそれぞれの目的地へと運ばれます。

発達が見られる細胞

粗面小胞体は、タンパク質合成が盛んな細胞でよく発達しています。具体的には、以下のような細胞で顕著に見られます。

膵外分泌細胞：膵液中の消化酵素を大量に分泌するため、粗面小胞体が豊富です。
胃底腺主細胞：胃液中のペプシノーゲンなどの消化酵素を分泌するため、粗面小胞体がよく発達しています。
形質細胞：抗体を大量に産生・分泌するため、粗面小胞体が非常に発達しています。
肥満細胞：ヒスタミンなどの炎症性メディエーターを合成・分泌するため、粗面小胞体が発達しています。
神経細胞：神経伝達物質や神経成長因子などを合成・分泌するため、粗面小胞体が発達しています。

滑面小胞体との関係

粗面小胞体と対照的に、リボソームが付着していない小胞体は滑面小胞体と呼ばれます。滑面小胞体は、脂質やステロイドホルモンの合成、解毒作用、カルシウムイオンの貯蔵など、異なる機能を持っています。細胞の種類によっては、粗面小胞体と滑面小胞体が複雑に入り組んで存在している場合もあります。

ニッスル小体との関係

神経細胞の細胞質内には、ニッスル小体と呼ばれる特徴的な構造が存在します。ニッスル小体は、粗面小胞体と遊離リボソームが集合したもので、タンパク質合成の活発な場であることが知られています。神経細胞におけるタンパク質合成の重要性を示唆しています。

参考文献

日本獣医解剖学会編集　『獣医組織学 改訂第二版』　学窓社　2003年　ISBN 4873621135

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