小胞とは
小胞(しょうほう、英: vesicle)とは、細胞内に存在する膜で囲まれた袋状の構造体のことです。細胞内での物質の貯蔵や、細胞内外への物質輸送を担う重要な役割を果たしています。小胞は、
脂質膜の特性により自然に形成される構造で、細胞内には多様な種類の小胞が存在します。
小胞の主な機能としては、細胞内で合成された物質の貯蔵、細胞外への物質輸送、そして物質の
消化などが挙げられます。小胞の膜構造は
細胞膜と類似しており、そのため小胞は
細胞膜と融合して内部の物質を細胞外に放出することができます。また、細胞内の他の
細胞小器官の膜とも融合できるため、細胞内の物質輸送にも重要な役割を果たしています。
小胞は、少なくとも1層の
リン[[脂質]]二重層によって
細胞質基質と区切られています。1層の
リン[[脂質]]二重層を持つものを単層小胞、2層以上のもの多層小胞と呼びます。小胞の内部は
細胞質基質とは異なる環境にすることができ、この特性を利用して、小胞内を様々な化学反応の場として利用し、多様な物質や酵素を合成します。
小胞の種類
液胞は主に
植物細胞で発達しており、内部はほぼ水で満たされています。
植物細胞では、
浸透圧の調整や栄養物質の貯蔵に大きな役割を果たしています。
菌類では、
液胞は
食作用や
エンドサイトーシスに関与します。
エンドサイトーシスにおける
液胞は、
エンドソームとも呼ばれます。また、
原生生物の一部には収縮胞があり、
細胞質基質の低張を防ぐために細胞内から水を排泄します。
リソソーム
リソソームは、細胞内
消化を担う
消化酵素を含む小胞です。
エンドサイトーシスにより細胞外から取り込まれた物質は、食胞を形成し、リソソームと融合して分解されます。このプロセスはファゴサイトーシス(
食作用)と呼ばれます。さらに、リソソームは損傷した
細胞小器官の分解にも関与し、細胞の清掃活動を担っています。
輸送小胞
輸送小胞は、細胞内の物質輸送に使われる小胞です。例えば、粗面
小胞体から
ゴルジ体への
タンパク質輸送に利用されます。
タンパク質の翻訳中に
シグナルペプチドが認識されると、
リボソームが粗面
小胞体に結合し、生成された
タンパク質は輸送小胞として分泌されます。輸送される
タンパク質は、
ゴルジ体で修飾を受け、リソソームや
ペルオキシソーム、または細胞外へ輸送されます。
分泌小胞
分泌小胞は、細胞内の物質を細胞外へ放出するのに用いられる小胞です。細胞が物質を放出する主な理由は、老廃物の排出と、化学物質放出による
シグナル伝達です。シナプス小胞や
ホルモン分泌、
細胞壁構成酵素の分泌などがその例です。
その他の小胞
ガス小胞は、ガスを蓄積することで浮力による移動を調節します。
古細菌などに見られます。細胞外マトリックス小胞は、細胞外マトリックスとの相互作用により
細胞膜から出芽し、
カルシウムや
リン酸塩などを輸送します。
小胞の形成と輸送
小胞輸送は、
エンドサイトーシスとエキソサイトーシスに大別されます。
エンドサイトーシスは細胞外物質の取り込み、エキソサイトーシスは細胞内物質の放出を担います。どちらの場合も、輸送対象物質は
タンパク質に囲まれ、被膜小胞を形成します。
エンドサイトーシスでは、クラスリンやアダプチンが
エンドソーム形成の骨格として働き、クラスリンで覆われた小胞をクラスリン被膜小胞と呼びます。また、小胞が別の器官と融合する際には、SNARE
タンパク質が重要な役割を果たし、小胞内の物質を認識するためのマーカーとして機能します。
関連用語
小胞体
小胞輸送
エンドサイトーシス
エキソサイトーシス