粘土釘

粘土釘：古代メソポタミアの建設記念碑

粘土釘は、紀元前三千年紀にシュメールやメソポタミア文明で用いられ始めた、太い円錐形の釘です。粘土で作られた釘の円錐面には楔形文字で銘文が刻まれ、神殿などの建物の壁面に打ち込まれました。これらの銘文には、誰が、誰のためにその建物を建設したのかが記録されており、例えば、王が神に建物を奉納したことが記されています。

粘土釘は、粘土（製）円錐、粘土（製）コーン、クレイペグなどとも呼ばれます。シュメール人は、粘土釘の頭の丸い部分に様々な彩色を施し、土壁に打ち込んで建物の壁や柱にモザイク模様を描くのにも使用しました。文字が刻まれていないこれらの粘土釘は、壁を補強する役割も果たしていたと考えられています。

石から粘土へ：銘文の記録媒体の変遷

建造物の建立を記念する銘文は、当初は石に刻まれることが一般的でしたが、次第に粘土製の釘が主流となりました。金属が用いられた例としては、「フルリの定礎像」（シリア、鋳物、紀元前2,300～2159年頃）があります。また、ガラスも使用されました。

古代エジプトでも円錐型の葬送用コーンが使用されていましたが、こちらは主に円錐の底面に文字が刻まれていました。

粘土釘に刻まれた多様な銘文

粘土釘に刻まれた銘文は、神殿の建設を祝う短いものから、歴史上の出来事を詳細に記述した長文のものまで様々です。

エンメテナ王の粘土釘

ラガシュ王エンメテナ（紀元前25世紀頃？）は、ウルクとの和睦を記念し、バド・ティビラの町の神に奉納する神殿を建設しました。エンメテナの粘土釘には、ウルクの王子ルガルキニシェドゥドゥと和平条約を結ぶに至った経緯が刻まれています。

ウル・ナンム王の粘土釘

「ナンナ神殿を建てたウルの王、ウル・ナンム」という短い碑文が刻まれた粘土釘も存在します。

グデア王の粘土釘

グデア王がラガシュに都市神ニンギルスに捧げるエニンヌ神殿を建立した際の粘土釘です。

シン・カシッド王の粘土釘

「シン・カシッド、強き王、ウルクの王、アムナムヌの王、王たる自らの宮殿を建てた」と刻まれた粘土釘も発見されています。

ハンムラビ王の粘土釘

ハンムラビ期の粘土釘の特徴は、キノコのような形状で、頭部が大きく胴部が短いことです。シカゴ大学オリエント研究所には、アッカド語の楔形文字が刻まれたハンムラビ王の粘土釘が収蔵されており、ペンシルベニア大学とオックスフォード大学が複製を保有しています。

関連事項

粘土板
古代エジプト
* 尖筆

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