粥見井尻遺跡

粥見井尻遺跡：縄文草創期の息吹を感じる場所

粥見井尻遺跡は、三重県松阪市飯南町粥見で1996年に発見された、縄文時代草創期の重要な遺跡です。櫛田川左岸の段丘上に位置し、その指定面積は1,695.84平方メートルに及びます。国道368号のバイパス工事中に発見され、その後の発掘調査によって、貴重な遺物が多数出土しました。

日本最古級の土偶

この遺跡の最大の特徴は、日本最古級と評価される土偶が出土したことです。竪穴建物跡から発見された2点の土偶は、1点が女性の上半身を模したもので、もう1点は頭部のみです。これらの土偶は、当時の人々の精神文化や信仰を知る上で非常に重要な資料であり、三重県の有形文化財に指定され、三重県埋蔵文化財センターに所蔵されています。

同時期の土偶としては、滋賀県で発見されたものがありますが、形状や特徴に共通点は少ないとされています。粥見井尻遺跡の土偶は、その独自性からも注目を集めています。

竪穴建物跡と当時の暮らし

遺跡からは、竪穴建物跡も発見されており、その痕跡から、同じ場所に2～3回ほど建て替えられたことがわかっています。このことは、当時の縄文人がこの地で比較的長く定住していた可能性を示唆しています。竪穴建物は、当時の住居の形態を知る上で貴重な情報源です。

讃岐岩の石鏃

発掘された矢の先端には、讃岐岩（サヌカイト）が使用されていました。讃岐岩は、現在の香川県で産出される石材であり、当時の人々が遠方から資源を調達していたことがわかります。二上山（奈良県・大阪府）で採集されるため、高見峠を越えて持ち込まれたと考えられています。

遺跡の保存と活用

遺跡の重要性から、国道368号のバイパス工事は、遺跡部分をまたぐ高架方式に変更されました。また、高架下は「粥見井尻遺跡公園」として整備され、竪穴建物が復元・公開されています。2000年6月12日には、三重県指定史跡に指定され、その価値が保護されています。

アクセス

バス: JR、近鉄・松阪駅前から三重交通バス・道の駅飯高駅行き、またはスメール行きに乗車し、「粥見神社前」で下車（所要時間：40-50分）。
乗用車: 伊勢自動車道・松阪インターチェンジから国道166号を経由（所要時間：30分）。

粥見井尻遺跡は、縄文時代草創期の文化や生活を知ることができる貴重な場所です。公園として整備されているため、気軽に訪れることができ、古代のロマンに触れることができます。

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