精索

精索（せいさく）

精索（せいさく、英語では Spermatic cord と呼ばれます）は、男性の骨盤から陰嚢内の精巣へとつながる重要なコード状の構造物です。この組織は、精巣の機能維持と生殖活動に不可欠な、いくつかの要素を一括して包み込み、保護する役割を担っています。その形状は、成人男性ではおおよそ直径が1センチメートル程度の、比較的しっかりとしたひも状に見えます。

構成要素

精索の内部には、精巣と体をつなぐ様々な管や血管、神経が収められています。主要な構成要素は以下の通りです。

精管（せいかん）: 精巣で生産された精子を、射精時に体外へ運ぶための細い管です。
血管（けっかん）: 精巣に酸素や栄養を供給するための動脈や、老廃物を回収するための静脈が含まれます。特に、入力情報によると約4ミリメートル径の血管が確認されます。これらの血管は、精巣の温度調節にも重要な役割を果たします。
神経（しんけい）: 精巣や周囲組織への感覚神経や、血管の収縮などを制御する自律神経などが通っています。
リンパ管（りんぱかん）: 精巣からのリンパ液を排出し、免疫機能に関わるリンパ球を運搬します。

これらの重要な要素は、精索を構成する三つの層状の膜によってしっかりと包まれ、保護されています。

精索を包む三層の膜

精索の外側を覆う膜は、それぞれが腹壁の筋肉や筋膜から派生した三つの層で構成されています。外側から順に見ていきましょう。

1. 外精筋膜（がいせいきんまく、External spermatic fascia）: 最も外側に位置する膜です。これは、腹部の最も外側に存在する筋肉である外腹斜筋（がいふくしゃきん）を覆う筋膜が、精巣の下降とともに移動し、連続したものです。腹壁の保護機能を引き継いでいます。
2. 精巣挙筋（せいそうきょきん、Cremaster muscle）: 中間の層を形成するのは筋肉組織です。これは、外腹斜筋のさらに内側にある内腹斜筋（ないふくしゃきん）の一部が変化してできたものです。精巣挙筋は、寒冷時には収縮して精巣を体幹に引き寄せ、温暖時には弛緩させて精巣を下げることで、精子形成に適した温度（体温よりやや低い温度）に精巣を保つ役割を持っています。
3. 内精筋膜（ないせいきんまく、Internal spermatic fascia）: 最も内側に位置し、精索の内部構造に直接接する膜です。これは、腹筋の中で最も深層にある腹横筋（ふくおうきん）とその内側にある腹横筋筋膜が、精巣の下降に伴って延長され、精索の内層を形成したものです。腹腔内圧の変化に対応する機能も担います。

これらの三つの層が協力して、精索内部の脆弱な構造を物理的な衝撃から保護し、支持しています。

臨床的な側面

精索は、臨床的にも重要な部位です。特に、精索の比較的上方の部分は皮膚の表面近くに位置しています。この表層に近い位置関係は、男性の外科的避妊法である精管結紮術、いわゆる「パイプカット」を行う際に利用されます。パイプカットは、この部位で精管を切断または結紮することで、精子の通路を遮断する手術です。

また、精索に関連する代表的な疾患として、精索静脈瘤（せいさくじょうみゃくりゅう）が挙げられます。これは、精索内に存在する静脈が拡張し、蛇行する状態を指します。精索静脈瘤は、男性不妊の原因の一つとして知られており、治療が必要となる場合があります。

このように、精索は精巣と体幹を結ぶ単なる通路ではなく、生命維持と生殖に関わる重要な構造物を保護し、精巣機能の維持にも貢献する、解剖学的にも機能的にも重要な役割を担う組織です。

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