精霊伝説ヒューディー

精霊伝説ヒューディーとは

『精霊伝説ヒューディー』は、漫画家である大野安之によるファンタジー作品です。角川書店が発行していた雑誌『コンプティーク別冊 コミックコンプティーク』（後に誌名を月刊コミックコンプに変更）の1988年5月創刊号から、単行本第1巻に収録された分のみが雑誌掲載されました。

作品概要

本作の単行本は、雑誌に掲載された内容を含む第1巻「第一部 急ぎ歩きの迷い子（前編）」に加え、物語の続きを描いた書き下ろしとして第2巻「第一部 急ぎ歩きの迷い子（後編）」、さらに第3巻「第2部 モノセロスの呪縛 〜魔人露宮編〜」（おおのやすゆき名義）が刊行されました。しかし、物語は全3巻で未完のまま中断されています。正伝以外に、外伝作品も存在し、中でも『精霊伝説ヒューディー外伝 ローティスなあじゃ』は単行本として刊行されています。

主人公・滸蝶（ヒューディー）の登場経緯

主人公である精霊、滸蝶（ヒューディー）は、実は本作の連載開始よりも以前に、大野安之の初期作品に登場していました。『That's!イズミコ』〜澪篝火や、習作と思われる短編作品「暗潮」「革命祭」（『C-LIVE』掲載）などにその姿が描かれており、復讐のため大地を巡った精霊として紹介されたり、フーディエ、フゥーディーといった別名で登場したりしています。これらの初期の出来事は、『精霊伝説ヒューディー』の物語冒頭で、およそ1年半前の出来事として語られます。

本編が未完に終わった後も、続編の一部が『スーパーコンプVol.1』に掲載されたり、雑誌『コミックコンプ』に「精霊伝説ヒューディー外伝 星から来た子」や「精霊伝説ヒューディー外伝 ローティス・ナージャ」といった外伝が掲載されたりしました。「ローティス・ナージャ」は後に『ガンガンファンタジー』誌で「ローティスなあじゃ」として連載化されています。

また、仙女玲瓏が登場する『精霊伝説ヒューディー外伝「ローティスなーじゃ-石の竜-」』（『ガオ!増刊「爆れつハンター」』掲載）が、外伝を含めた中でも比較的新しい、滸蝶に関連するストーリーとなっています。なお、『精霊伝説ヒューディー外伝 ローティスなあじゃ』の単行本化の際には、雑誌掲載時のヒューディーが仙女玲瓏と改名され、設定や術の名称も変更されています。

物語

物語の舞台は、文字通り無限に広がる世界『大地上』です。この世界には、人間、精霊、竜、獣人、機器人、邪魅など、様々な種族が共に暮らしています。

第一部 急ぎ歩きの迷い子

主人公のヒューディーは精霊でありながら、その特別な出生ゆえに人間の属性を強く持つ、半人半精霊です。物語は、彼が恩人であった李欣を它省特捜局副長・玄明によって殺されたことから始まります。ヒューディーは復讐と、自身の存在意義を探す旅に出るため、它省の首都・它蕃へと向かいます。

它蕃に到着したヒューディーは、治安局の弾圧に抵抗する河川組合のリーダー・咬素らとの抗争に巻き込まれます。その中で、它蕃の政治の中枢である「大内裏」に、精霊と相反する邪魅の存在を察知し、敵対することになります。

河川組合のアジトで、ヒューディーは初めて他の健全な精霊である香魂と出会い、精霊の基礎を学びます。他種族に干渉しないという精霊のあり方に憤るヒューディーに対し、香魂は、人間の属性を持ち「殺劫を持つ精霊」であるヒューディーだけが人間社会に関与できること、この街の邪魅と戦う役割は彼にあり、それを乗り越えた時に真の精霊になれるだろうと諭します。

大内裏との抗争が激化する中、ヒューディーは特捜局長・仇生が放った制精霊禁詛弾によって倒れてしまいます。しかし、それは逆に人間としての畏怖が抑えていた精霊としての力を解放させることになり、彼は巨大炎官形態として顕現。軍の戦艦を瞬時に破壊し、多数の神官や近衛の呪詛を退けながら、それらごと大内裏全体を巨大な結界で封印しました。

第二部 モノセロスの呪縛 〜魔人露宮編〜

物語は第二部へと移り、潤の王女である紗叡との出会いから始まります。彼女は機械鳥に追われており、ヒューディーに助けられます。紗叡の故郷である潤の都は、角角角の第一臣下である露宮率いる角省軍によって征服されており、住民は動物の姿に変えられ連れ去られていました。紗叡は術に長け、辛うじて逃げ延びていたのです。

物語は、一角獣（モノセロス）である角角角が、自身の呪縛を解くために精霊を捕らえようとしていることを巡る展開へと進んでいきます。庚珊省の龍王・朱仲や、角角角に呪縛された精霊・子瑛、角角角によって造られた女性型戦闘員である角晶娘々やその中でも異端な存在である麗摩、角角角配下の龍・不濁といった新たなキャラクターが登場し、モノセロスの呪縛を巡る戦いが描かれます。

主な登場人物

本作には多数の魅力的なキャラクターが登場します。

滸蝶（ヒューディー）: 物語の主人公。精霊でありながら人間の属性を強く持つ半精霊。「殺劫を持つ精霊」と呼ばれ、人間との関わり合いの中で成長し、自身の運命と向き合います。
玄明（ジュアミン）: 它省特捜局副長。自身の力を試すことを生きる目的とし、恩人である李欣を殺害したことでヒューディーとの因縁が生まれます。
香魂（ジャンハン）: 健全な精霊。直接介入はしないものの、ヒューディーを導き、精霊としての生き方や「殺劫を持つ精霊」の役割を教えます。
咬素（ヤオズ）: 它蕃の河川組合のリーダー。政府の弾圧に抵抗しており、ヒューディーと関わることになります。
仇生（チュセン）: 它省特捜局局長で、邪魅の僕。人間を蔑み、主人である大帝の復活を目論んでいます。
大帝（たいてい）: 它蕃の地に封印された大厄災。絶遁と呼ばれる種族の個体です。
紗叡（シャルーエ）: 角省軍に滅ぼされた潤の王女。術に長けています。
露宮（ルーゴン）: 角角角の第一臣下。角省の実働部隊を指揮し、子瑛を呪縛によって支配しています。
子瑛（ザイエン）: 「殺劫を持つ精霊」として知られていましたが、角角角に捕らえられ呪縛をかけられています。
角角角（ジャオジュージュー）: 第二部の主要な敵対者。一角獣（モノセロス）であり、同族の呪縛を解くために精霊を狙います。

他にも、ヒューディーを育てた義父である学者、霊獣の天禄（チャンルウ）&辟邪（ビグジィ）、它蕃の少女・慧小（ヒューチャオ）、庚珊省の龍王・朱仲（ズィーゾン）、角晶娘々、麗摩、不濁など、個性的な面々が登場します。

単行本情報

本作の単行本は、角川書店からコンプコミックスDXレーベルより以下の全3巻が刊行されています。

精霊伝説ヒューディー (1) ISBN 4-04-712002-2
精霊伝説ヒューディー (2) ISBN 4-04-712006-5
* 精霊伝説ヒューディー (3) ISBN 4-04-712019-7

関連情報として、マンガ図書館Zにて本作を閲覧することが可能です。

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