糟屋義明

糟屋義明（生没年不詳）は、幕末の動乱期に幕府を支えた幕臣の一人であり、旗本という家柄でした。父は糟屋弥右衛門。通称は鎗之助（やりのすけ）といい、志摩守、大和守、筑後守といった官途を歴任しました。

万延元年（1860年）に小納戸頭取という要職に就き、幕府の財政を管理する役割を担いました。文久元年（1861年）には箱館奉行に任命され、筑後守に補任されます。箱館奉行時代には、北方からの脅威に対処するため、ロシアとの外交交渉に尽力しました。当時、ロシアは北蝦夷（樺太）においてアイヌ人を酷使しており、その状況を憂慮した糟屋は、ロシア領事ヨシフ・ゴシケーヴィチとの間で激しい折衝を行い、アイヌ人の使役を拒絶しました。この交渉は、日本の領土と人民を守るという強い意志を示すものでした。

同年12月には再び小納戸頭取となり、翌年には禁裏附となりますが、文久4年（1864年）に免職となり寄合となります。その後、慶応3年（1867年）に外国奉行並に任じられ、10月には新潟奉行を兼帯し、新潟港の開港準備に取り組みました。新潟は、外国との貿易拠点として重要な港であり、その開港は日本の近代化にとって不可欠なものでした。糟屋は、開港に向けた様々な課題を解決し、円滑な貿易開始のために尽力しました。

慶応4年（1868年）3月まで新潟奉行を務め、戊辰戦争勃発により幕府が崩壊したため、最後の新潟奉行となりました。激動の時代において、糟屋義明は幕府の要職を歴任し、外交交渉や開港準備など、多岐にわたる分野でその能力を発揮しました。彼の功績は、幕末の日本の歴史において特筆すべきものと言えるでしょう。

参考文献
全国版幕末維新人物事典（歴史群像編集部編、学研）
新札幌市史, 第8巻、第2部（札幌市教育委員会）p29

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