紀州一揆

紀州一揆とは

紀州一揆は、慶長20年（1615年）に紀伊国（現在の和歌山県）で発生した大規模な農民蜂起です。日高郡、名草郡を中心に紀伊国全域に拡大したため、熊野一揆や日高一揆とも呼ばれることがあります。この一揆は、大坂夏の陣と密接に連動して発生したと考えられています。

一揆の背景

当時、大坂を拠点とする豊臣氏は、摂津、河内、和泉の3ヶ国で70万石を領有していました。一方、紀伊国には浅野氏が37万石を領していました。豊臣氏は、東西決戦に先立ち、隣接する浅野氏をまず潰しておくという戦略を立てていました。この豊臣氏の思惑と、紀州の土豪たちが日頃から抱えていた不満が合致し、一揆という形で表面化したと考えられています。

浅野氏の史料である『浅野考譜』によれば、豊臣方の武将である大野治長の部下が紀州に潜入し、浅野長晟が出陣した隙に和歌山城を占拠する計画を立て、一揆を扇動したと記されています。また、和歌山城占領後は、背後から浅野軍を挟撃する作戦も計画されていたようです。

一揆の経緯

大野治長は、一揆を扇動するために北村善大夫と大野弥五右衛門を紀州へ派遣しました。日高郡では、湊惣左衛門という人物が「大坂方に味方すれば所領は望み次第与える」という内容の朱印状を携え、同志を募っていました。また、名草郡では、山口喜内の一族、薗部兵衛、和佐半左衛門、土橋兵治らが中心となって一揆を組織しました。

こうした動きは、前年の大坂冬の陣の頃から見られており、浅野長晟もその兆候を察知していました。しかし、徳川家康からの出陣命令を拒むことができず、不安を抱えながらも4月28日に和歌山城を出陣しました。浅野軍が和泉佐野付近まで進軍した頃、紀州で一揆が発生したという知らせが届き、北村善大夫、大野弥五右衛門、山口喜内らは捕縛されました。

一方、大坂城では大野治長の弟である大野治房を頭首とする軍勢が編成され、紀州に向けて南下を開始しました。その兵力は3万から4万とも言われる大軍でしたが、内部統率が不十分であり、和泉樫井で浅野長晟軍に迎撃され、壊滅状態となりました。

浅野長晟は、樫井の戦いの後、和歌山城に引き返し、日高方面の一揆勢力の鎮圧に乗り出しました。鹿ヶ瀬や蕪坂峠などで一揆勢を次々と討伐し、鎮圧しました。

一揆の結末

一揆は鎮圧され、浅野氏がまとめた史料『浅野家文書』によれば、処分された村は日高郡が5村252名、有田郡が4村48名、名草郡が6村114名、那賀郡・伊都郡がそれぞれ1村29名、合計5郡17村443名に及んだとされています。

関連事項

国一揆
大野治長
浅野長晟
樫井の戦い
湊惣左衛門
大坂夏の陣

参考文献

* 『戦国合戦大事典』- 戦国合戦史研究会（1989年、新人物往来社）

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