紀州鉄道線

紀州鉄道線について

紀州鉄道線（きしゅうてつどうせん）は、和歌山県御坊市の御坊駅から西御坊駅までを結ぶ鉄道路線です。この路線は、和歌山県内で唯一の全線非電化私鉄として重要な役割を果たしています。その歴史は1927年に遡り、地元の有志によって鉄道敷設の運動が始まりました。

路線の概要

紀州鉄道線の営業距離は2.7kmで、1067mmの広軌を採用しています。また、全線単線であり、複線区間は存在しません。駅数は5つ。閉塞方式はスタフ閉塞式で、最高速度は時速40kmで設定されています。特筆すべきは、すべての区間が電化されていない点であり、これは近畿地方では非常に珍しい状況です。

歴史的背景

紀州鉄道線の設立は1928年3月、御坊臨港鉄道として鉄道免許が下付され、同年12月に株式会社が設立されました。初代社長には田淵栄次郎が就任。その後、土地の買収に手間取りながらも、1931年6月に御坊駅から御坊町駅（後の紀伊御坊駅）間が開業しました。その後も延長工事が続けられ、1934年には日高川駅まで開通し、貨物輸送も始まりました。

営業成績は乏しく、初めての利益計上は1935年となりましたが、それも主力銀行の経営難が影響していたと言われています。1941年には累積欠損金が14,487円に達し、経営は厳しい状況に置かれました。

戦争と復興

第二次世界大戦中には、軍需工場の影響で旅客が増加する一方で、資材不足や機材の老朽化が問題となりました。特に1943年から1944年にかけては、大和紡績の工場が軍需工場として活用され、ピーク時には多くの利用者を記録しましたが、空襲や物資不足に直面しました。

戦後は社会情勢の変化とともに様々な困難が続きましたが、1953年の紀州大水害で全線が冠水する大きな事件が発生。翌年から徐々に乗客数が回復し、1960年代中盤には100万人を超えましたが、その後は減少の一途を辿り、1973年には管理会社が変更され紀州鉄道となりました。

最近の動向

紀州鉄道線は、2017年に脱線事故を経験し、老朽化した枕木の交換作業が始まりました。2023年には、土木学会から「紀州鉄道及び旧御坊臨港鉄道廃線部分」として土木遺産に認定され、地域にとっての重要な資産として再評価されています。

運行形態

2023年3月のダイヤ改正では、日中で約1本ずつの運行が行われ、朝夕は2本の運転間隔で合計18往復が設定されています。従来からJR紀勢本線の普通列車との接続が重視されており、特急との接続は考慮されていません。また、最終列車の出発が19時51分と早く、使い勝手に影響を与えているようです。

終わりに

紀州鉄道線は、地域に密着した私鉄として、多くの困難を乗り越えながら発展してきました。その歴史や運行状況は、地域の人々にとって大切な生活の一部となっていることがわかります。これからも地域の交通網としての役割を果たし続けることが期待されます。

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