約束 (ドクター・フーのエピソード)

約束 (The Pilot)

「約束」は、イギリスの長寿SFドラマシリーズ『ドクター・フー』の第10シリーズ初回にあたるエピソードです。原題は「The Pilot」。スティーヴン・モファットが脚本を手がけ、2017年4月15日にイギリスのBBC Oneで初めて放送されました。

このエピソードは、ピーター・カパルディが演じる12代目ドクターの新たな旅立ちを描くと同時に、シリーズを再活性化させる「ソフトリブート」としての役割を担っています。特に、新しいコンパニオンとしてビル・ポッツが登場し、演じるパール・マッキーの演技は各方面から称賛を受けました。

物語は、大学の食堂で働くビル・ポッツ（パール・マッキー）が、聴講している物理学の講義を担当する12代目ドクター（ピーター・カパルディ）に目を付けられることから始まります。ドクターはビルに個人的な指導を始め、二人の奇妙な師弟関係が築かれていきます。一方、ビルのガールフレンドであるヘザー（ステファニー・ハイアン）は、大学構内に出現した不思議な水たまりに引きずり込まれてしまいます。水のような液体で構成された肉体を得たヘザーは、「ビルを置いていかない」という約束を守るため、その姿でビルを追跡し始めます。恐怖を感じたビルは、ドクターと、彼と共に暮らすナードル（マット・ルーカス）に助けを求め、三人の間に奇妙な絆が芽生え、宇宙への冒険へと導かれていきます。

エピソードには、過去のシリーズへの言及が随所に散りばめられています。ドクターの机には、妻リヴァー・ソングや孫娘スーザンの写真が飾られ、クラシックシリーズと新シリーズの両方のソニック・スクリュードライバーが置かれています。ヘザーに追われたターディスがたどり着く戦場は、4代目ドクターの時代（1979年）に初めて語られたモヴェラン人とダーレクの長く続く戦争が繰り広げられている場所です。また、ドクターがビルの記憶を消そうとする場面は、コンパニオンであるドナ・ノーブルの記憶を消さざるを得なかった過去の出来事を想起させます。このシーンで流れる音楽は、ドクターにとって重要な存在であったクララ・オズワルドのテーマ曲であり、第9シリーズ終盤での出来事を反映しているかのようです。

製作面では、本作を含む最初の2話の台本読み合わせが2016年6月14日に行われ、撮影は同年6月20日から7月28日にかけて実施されました。当初、エピソードは「A Star in Her Eye」というタイトルで予定されていましたが、放送前の2017年5月に「The Pilot」に変更されたことが明らかになりました。このタイトルには、シリーズを新たに始めるという意味合いが込められています。キャストには、ビル役のパール・マッキーの他に、ビルの里親を演じるジェニファー・ヘネシーがいますが、彼女は以前、第3シリーズの「大渋滞」（2007年）に別の役で出演した経験があります。

放送後、イギリス国内ではリアルタイムで464万人が視聴し、同時間帯の番組の中で3番目に高い記録となりました。タイムシフト視聴を加算すると、視聴者数は668万人に達し、評価指数であるAppreciation Indexは83という高い数値を示しました。日本ではテレビ放送されませんでしたが、過去のクリスマススペシャルに続き、2018年3月31日からHuluにて第10シリーズ全話の独占配信が始まりました。

本作はテレビ放送に加えて、国際的に映画館でも上映されました。アメリカ合衆国では2017年4月17日と19日に劇場公開され、エピソード本編に加えて、スピンオフシリーズ『CLASS/クラス』の第1話や、パール・マッキーの舞台裏映像、彼女の旅路を追った特典映像が上映されました。オーストラリアでも2017年4月16日に、ボーナス映像「Becoming The Companion」と共に上映が行われました。

批評家からの反応は、概ね肯定的なものが多数を占めました。多くの批評家が、新しいコンパニオンであるビル・ポッツの導入を成功と評価し、パール・マッキーの演技がシリーズに新鮮なエネルギーをもたらしたことを指摘しました。また、エピソードの構成がソフトリブートとして機能している点も称賛されました。一部の批評家は、プロットやエイリアンの描写に改善の余地があることや、ビルへの導入がやや急であると感じた点を挙げましたが、総じて「第10シリーズの確固たる基盤を築いた」「平和的で楽しい導入」といった評価が寄せられました。特にビルとドクターのケミストリーや、ナードルを含むトリオの面白さ、そして記憶消去のシーンのような情緒的な要素も高く評価されました。否定的な意見としては、プロットが浅く、特殊効果が不十分、敵が未発達といった厳しい評価もありましたが、それでもビル役のパール・マッキーの演技は多くの批評家から認められました。全体として、「約束」はシリーズの新しい幕開けとして、特に新しいコンパニオンを通じて好評をもって迎え入れられたエピソードと言えるでしょう。

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