紅い稲妻

紅い稲妻：本土復帰前沖縄を舞台にした少女空手アクションドラマ

1970年、フジテレビ系列で放送された『紅い稲妻』は、全13話で構成された痛快なアクションドラマです。放送時間は毎週土曜日の19時00分から19時30分。沖縄を舞台に、空手の達人である少女・松村奈美が、行方不明になった父親を探す物語が展開されます。

スポ根ブームと沖縄ロケ：時代を反映した作品

『紅い稲妻』は、1970年代に流行したスポ根ドラマの影響を強く受けています。ライバルとの激しい攻防や、親子間の葛藤など、同時期に人気を博した『巨人の星』や『サインはV』といった作品と共通する要素が多く見られます。

この作品の魅力の一つは、沖縄でのロケ撮影です。当時、まだ本土復帰前だった沖縄の美しい自然の中で撮影された迫力あるアクションシーンは必見です。奈美の潜水シーンの吹き替えを務めた地元の女子事務員は、役作りのために髪型をショートカットにし、撮影前から潜水の特訓を受けていました。さらに、沖縄空手道連盟の有段者が、奈美を鍛える敵役として出演するなど、地元住民の協力によって制作されました。

キャストとスタッフ：実力派俳優陣とベテラン脚本家

主演の沖わか子さんは、本作でテレビドラマデビューを果たしました。脇を固めるのは、嵐寛寿郎さん、菅原謙次さんなどベテラン俳優陣。敵役には、当時人気絶頂だった石橋正次さんも出演。豪華なキャスティングが、作品に重厚感を与えています。

脚本は、後の『仮面ライダー』や『帰ってきたウルトラマン』などの特撮作品を手掛けることになる上原正三氏が担当。上原氏は沖縄出身で、本作の舞台である沖縄の文化や風土を深く理解した脚本を執筆しました。主題歌は、堀江美都子さんが歌い上げ、作品の世界観を盛り上げています。

ストーリー：父を捜して、悪の組織に立ち向かう

奈美は、祖父から沖縄空手を学び、達人の技を身につけた少女です。行方不明になった父親を探すため、密航して上京しますが、そこで謎の空手家組織の陰謀に巻き込まれます。実は父親は、この組織の陰謀を阻止するために潜入捜査をしていたのです。奈美は、父との再会を願って、兄と共に組織と壮絶な戦いを繰り広げます。彼女の必殺技「くれない三段蹴り」は、見どころの一つです。

視聴率とその後：惜しまれつつも放送終了

残念ながら、『紅い稲妻』は、同時期に放送されていた『巨人の星』の人気に対抗することができず、視聴率は低迷しました。そのため、放送開始からわずか2ヶ月で、年内いっぱいで放送終了することが決定しました。

しかし、主演の沖わか子さんは、その後『仮面ライダー』へのレギュラー出演で広く知られるようになり、本作は、彼女のキャリアの出発点として大きな意味を持っています。また、奈美の兄・政彦役には、後に仮面ライダー2号を演じる佐々木剛さんが候補に挙がっていたというエピソードも残されています。

まとめ：沖縄の文化とスポ根ドラマを融合

『紅い稲妻』は、沖縄の文化とスポ根ドラマの要素が見事に融合した、個性的な作品です。豪華なキャスト、沖縄ロケ、そして魅力的なストーリー。残念ながら短命に終わった作品ですが、その存在感は、日本のテレビドラマ史において特筆に値するものです。当時を知る方々にとって、懐かしく、そして興味深い作品と言えるでしょう。

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