紅葉山御養蚕所

紅葉山御養蚕所の歴史と役割



紅葉山御養蚕所(もみじやまごようさんじょ)は、東京都千代田区に位置し、皇居内の紅葉山にある養蚕施設です。ここは、歴代皇后が行う「御親蚕(ごしんさん)」のための大切な場所となっています。

この施設の歴史は古く、462年に『日本書紀』に記録が残っています。当時の雄略天皇皇后に蚕の飼育を勧めたことから、皇室における養蚕の伝統が始まりました。その後、明治時代に昭憲皇太后皇居内に蚕室を設けたことで、長らく途絶えていたご養蚕が復活しました。この時から、皇后たちが公務として受け継いでいくことになったのです。

1914年に現在の建物が完成し、木造2階建ての構造で、1階は飼育室、2階は上蔟室として機能しています。別棟には、地下の貯桑室や御休所も併設され、御休所には蚕の神、和久産巣日神や大宜都比売神が祀られています。

皇室と養蚕の意義



明治時代における養蚕業は、日本の重要な輸出品目であり、特に生糸と蚕種は経済的な面でも国の発展に寄与しました。政府は養蚕業を産業の振興策の一環として位置付け、宮中での養蚕は殖産興業としての意味を持つものでした。過去には、群馬県にある富岡製糸場でもフランスの先進技術が導入され、養蚕業が国にとって非常に重要であったことがわかります。

その後、何度かの中断を経て、1908年には貞明皇后によって養蚕が再開され、1928年には香淳皇后1990年には上[[皇后]]美智子に引き継がれました。さらに、皇太后時代には大日本蚕糸会の総裁が皇族によって担われ、2021年からは常陸宮正仁[[親王]]がその役割を果たしています。

現代のご養蚕



ご養蚕は毎年春から初夏にかけて行われ、準備は2、3月から始まります。儀式「御養蚕始の儀」が執り行われた後、皇后は孵化したばかりの蚕に桑の葉を与える作業を行います。これに続き、何度かにわたって桑を与える「御給桑行事」が実施され、蚕が繭を作る際の準備が進められます。繭の収穫後は、製糸のために上繭が出荷され、宮中での様々な儀式や外交の場で使用される絹製品が生成されます。

2020年には新型コロナウイルス流行の影響で、養蚕の体制が一時的に縮小されたり、純国産種の小石丸のみの飼育に制限される事態もありましたが、皇室の伝統は依然として受け継がれています。皇后は定例行事に加えて、日常的に桑摘みや繭作りに関わるなど、その職務を大事にしているのです。

伝統行事の紹介



ご養蚕にはいくつかの伝統的な行事があります。「御養蚕納の儀」は、収穫した生糸を神前に供え、感謝の意を表す行事です。繭や生糸が供えられ、儀式を通して神々に感謝を捧げます。また、皇后の御歌には、蚕や養蚕に関する思いが表現されています。

紅葉山御養蚕所は、古き良き日本の伝統を守る場所であり、皇室の大切な役割を果たしているのです。このように、今日に至るまで様々な工夫と努力が続けられています。

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