小石丸

小石丸（こいしまる）

小石丸は、日本在来の蚕の品種の一つであり、古くから宮中の御養蚕所において、皇后による御親蚕に用いられてきました。この品種は、非常に細く、上質な糸を産出することで知られています。また、小石丸と海外種を掛け合わせて作られた「新小石丸」という品種も存在します。

特徴

小石丸は、奈良時代から飼育が開始されたとされています。その繭から取れる糸は、一般的に絹糸として知られている家蚕（カイコ）の糸とは大きく異なる特徴を持っています。

• - 糸の特性: 小石丸の糸は、非常に細く、太さが均一ではありません。しかし、強度があり、引っ張っても切れにくいという特徴があります。また、けば立ちが少なく、藍染めなどが艶やかに映えるため、非常に良質な糸として評価されています。これは、一般的なカイコの糸とは対照的な特徴です。
• - 糸の収量: 小石丸の繭から取れる糸の量は、一般的なカイコの繭の半分以下であり、1つの繭から取れる糸は400〜500メートル程度です。
• - 飼育の難しさ: 小石丸は、産卵数が少ない、病気に弱い、繭を作る時期が個体によって異なるなど、飼育が難しい品種です。

歴史

明治時代までは、小石丸は日本の養蚕の主流品種でしたが、その後、飼育・生産効率が良い交雑種のカイコに切り替えられました。現代では、民間での飼育は極めて少なく、宮崎県綾町などごく限られた地域でのみ飼育されています。そのため、小石丸の繭は、一般的なカイコの繭よりも高値で取引されています。

宮中での役割

宮中では、近代以降、産業振興の意味も込めて、歴代の皇后が養蚕を行っています（皇后御親蚕）。昭和天皇の后である香淳皇后は、昭和天皇が即位の礼を行った1928年から養蚕を始め、1947年の記者会見で「古い日本種を保存したいと思って、小石丸も飼っています」と、この品種を紹介しました。

明治から大正にかけて珍重された小石丸でしたが、生産性の低さから衰退し、昭和末期には宮中に残るものも廃棄が避けられない状況でした。しかし、1989年に平成の践祚を迎え、新たに皇后美智子（当時、現：上[[皇后]]）が養蚕を引き継いだ際に、皇后の意向で小石丸の飼育がわずかながら継続されました。

1994年には、小石丸が正倉院に保存されていた絹織物（古代裂）の復元に必要であることが判明しました。その後、増産を経て、16年間、正倉院に小石丸の繭が提供され、2010年に復元が完了しました。

関連項目

• - 紅葉山御養蚕所

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