紅葉山文庫

紅葉山文庫について

紅葉山文庫（もみじやまぶんこ）は、江戸時代に江戸城内の紅葉山に設置された文庫で、現代の図書館に相当します。これは幕府が将軍をはじめとする高官のために、政務や教育に資する書籍を整備するために作られたもので、その大部分は後に明治政府に引き継がれ、内閣文庫の一部として一般に公開されています。

構造と目的

江戸時代初期から始まった紅葉山文庫の設立は、将軍が必要とする各種書籍のスムーズな利用を促進することを目的としていました。書物の収集、管理、補修、貸借、鑑定は書物奉行という役職の下で行われ、将軍だけでなく、老中や学者、藩主にも貸し出しが許可されました。一般に「紅葉山文庫」という名称は明治以降のもので、江戸時代には「御文庫」と呼ばれたり、雅称として「楓山文庫」などが使われました。

歴史的背景

紅葉山文庫の起源は、徳川家康が慶長7年（1602年）に設立した富士見亭御文庫にさかのぼります。家康は古今の書籍を収集し、文庫に収め、特に将軍とその家族に重点を置きました。1614年には江戸城へ特に重要な書籍が贈られ、家康の遺志を引き継ぐ形で文庫は拡充しました。

寛永10年（1633年）には書物奉行が設置され、寛永16年（1639年）には江戸城内の紅葉山廟横に移設されました。さらに、1710年には書物蔵が改築され、1711年には追加の建物が完成し、3棟の書物蔵が建立されました。

吉宗による発展

8代将軍の吉宗が就任すると、文庫はさらに発展し、書籍の目録作成や文献の収集が行われました。吉宗は特に中国文献や古文書の収集を行い、文学研究の基礎資料が蓄積されることになりました。

明治維新の影響

文政11年（1828年）には、毛利高標が自らの蔵書から多くの書籍を献上し、天保元年（1830年）に新たな書庫が完成しました。しかし、幕末の混乱とともに書物奉行は廃止され、明治維新以降は内閣文庫に改革されていくこととなります。明治17年には内閣により管理がされ、1971年に国立公文書館に移管されました。

蔵書の内容と管理

蔵書の内容は、家康が集めた書物を基に、幕府が書物師を通じて購入や献上を受けたものから構成されていました。幕末の時期には蔵書数がおおよそ11万冊に達し、主に漢籍が中心でした。文庫では、書物奉行が厳密な管理を行い、書物の保存状態を保つための保守作業も行われていました。

結論

紅葉山文庫は、江戸時代の知識と文化を後世に伝える重要な役割を果たしてきました。現在、一般公開されているこの文庫は、日本の歴史的資料として貴重な存在であり、学問や研究にとって欠かせない資源となっています。

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