納戸

納戸（なんど）について

納戸とは、一般的に住宅内で普段使わない衣類や家具、調度品などを保管するために設けられたスペースを指します。この空間は、建築基準法上で「居室」とは見なされない特性を持っており、主に採光や通気性が不足していることが理由です。

起源

納戸の起源は、平安時代の貴族的な建築スタイルである寝殿造にあります。この時代の住居には、多くの場合、出入り口以外の開口部を持たない閉鎖的な空間である「塗籠（ぬりごめ）」が取り入れられており、四方が土壁に囲まれていました。この塗籠は、14世紀頃の「慕帰絵」という絵巻物にも描かれており、当時は寝室としての用途も持ちつつ、高価な宝物を収納する場としても機能していました。そのため、「納殿（おさめどの）」という呼び名もありました。

時が経つにつれ、塗籠は主に天皇の御所では剣璽の間として存続し、武家屋敷でも江戸時代まで保たれていましたが、寝室としての役割は薄れていきました。このように、物を収納するための閉ざされた区画であった納戸の習慣は次第に一般庶民へと広がり、「納戸」という名称が使われるようになったと考えられています。

呼称と用途

最近の不動産業界においては、納戸は「サービスルーム」や「スペアルーム」とも呼ばれ、これらの名称の頭文字を取って「S」と表記することが一般的です。例えば、部屋数が「3LDK」に満たない場合、間取りを「2SLDK」として表現します。この表現は、明らかに収納の目的で設置された狭い空間を「押入」や「クローゼット」と区別し、居住空間としても利用可能であることをアピールする目的があると思われます。

実際、部屋数が少ない家庭では、納戸の広さが3畳から4畳半程度のことが多く、子ども部屋や書斎などとして利用される場面が多く見受けられます。また、納戸は寝室としての利用も残されており、特に地方の農家などでは、今でも納戸という言葉が寝室を指して使われることがあります。

このように、納戸は歴史的な背景を持ちながら、現代の住宅においても実用的なスペースとして重宝されています。適切な利用方法を考えれば、収納だけでなく多様な用途に活用できるのが魅力です。

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