納殿

納殿（おさめどの）は、古代日本において金銀、衣装、調度品といった貴重な品々を保管するために設けられた場所です。これは、後の時代の納戸（なんど）の原型とされています。

宮中における納殿

宮中では、納殿は重要な役割を担っていました。例えば、『西宮記』には、以下のような記録があります。

宜陽殿（ぎようでん）: 歴代の天皇が受け継いできた御物（ぎょぶつ）が保管されていました。
蔵人所（くろうどどころ）・綾綺殿（りょうきでん）: 恒例の御物や日常的に使用する品々が保管されていました。
仁寿殿（じじゅうでん）: 紙や屏風などが保管されていました。

また、『日本後紀』や『三代実録』には、春興殿も納殿として使用されていた記録があります。これらの納殿は、天皇の家政機関であった蔵人所が管理しており、蔵人や雑色といった役人がその管理にあたっていました。さらに、後涼殿にも納殿があったとされています。

貴族や寺院における納殿

納殿は、宮中だけでなく、公卿などの貴族の邸宅や寺院にも設けられていました。『今鏡』には、藤原師実や源雅実の邸宅に納殿があったことが記されており、『吾妻鏡』には、将軍の御所に納殿が造営された記事があります。また、『源氏物語』の「須磨」の帖にも、光源氏の邸宅に納殿が登場しています。

これらの記録から、納殿が貴重品を保管する上で、非常に重要な場所であったことがわかります。

納戸への変化

室町時代頃になると、納殿は「納戸」という呼び名で呼ばれることが一般的になりました。納戸は現代にも使われている言葉であり、収納スペースとしての役割を担っています。

まとめ

納殿は、古代から中世にかけて、貴重品を保管する上で欠かせない施設でした。宮中では天皇の財産を管理し、貴族や武士の邸宅では生活に必要な物資を保管する場所として機能しました。その役割は、後の時代の納戸へと引き継がれていくことになります。

参考文献

岡田隆夫「納殿」（『国史大辞典 2』、吉川弘文館、1980年）
岩田由美子「納殿」（『平安時代史事典』、角川書店、1994年）

関連項目

文殿

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