納金スト

納金スト（のうきんスト）



納金ストとは、特に公共料金の集金人によって行われるストライキの手法の一つです。この戦術では、集金人が利用者から得た料金を、経営者側に直接送金するのではなく、労働組合の口座に留め置きます。目的は、集金したお金を労働条件の改善が実現するまで会社に納金しないというメッセージとして用いることです。これは労働闘争の一環として位置づけられ、特に「生産管理闘争」というカテゴリーに分類されます。また、納金ストは「一時保管戦術」とも称され、利用者の資金を一時的に保管する形を取りますが、企業の財産権を侵害する可能性があるため、その正当性には議論があります。

事件の発展



この戦術が引き起こした法律的な争いの中で、特に有名な事件がいくつかあります。その中で「関西配電湊川事件」と「電産熊野分会事件」が挙げられます。両者は、労働者が業務上の横領罪で起訴され、最終的には最高裁判所まで争われましたが、結果的には労働組合員側が無罪となりました。

電産熊野分会事件では、日本電気産業労働組合（電産）に属する熊野分会のメンバーが、集金した電気代を組合の口座に入金し、会社に対して労働条件が改善されない限り会社の口座には入金しないと通告した事例です。最終判決では、会社側の主張する横領の構成要件の不備が理由とされ、組合員は自身の行為が不法でないことを証明しました。

結果と影響



こうした争議の結果として、多くのインフラ関連企業は、集金人の訪問によらない新たな料金徴収方法に切り替えるようになりました。1959年には三和銀行がIBM_650を導入し、金融業のコンピューター化が進展しました。その後、1980年代には、日本全国でほぼ全てのインフラ系企業で自動口座振替制度が普及しました。

しかしこの過程では、一部の地方企業では利用料金の納入に特定の銀行口座が必要で、これが利用者にとって不便な状況を生むこともありました。1990年頃には、都市銀行と第一地方銀行の間での相互利用が進みましたが、依然として口座が管理下に置かれるなどの問題が残っていました。そんな中、1987年に開始されたコンビニエンスストアによる収納代行サービスが普及すると、利用者は集金人との調整を気にせずに入金できるようになります。この結果、集金人に依存した料金徴収の方法はほぼ消滅しました。

一見すると法律的には勝利を収めた納金ストですが、その影響は労働者にとって必ずしもプラスの結果をもたらすものではありませんでした。結果として、企業は集金人を削減し、雇用の見直しを余儀なくされました。このように、納金ストは短期的には労働者の権利を守る手段として機能しましたが、長期的には労働者側の不利益をもたらす要因ともなり得ることを示す一例でもあります。

参考文献



関連項目



外部リンク


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