納銭方

納銭方とは

納銭方（のうせんかたまたはなっせんかた）は、室町幕府の時代において、土倉役や酒屋役の徴収を行うために設置された機関です。この機関は、土倉や酒屋の有力者から任命され、幕府の徴税を代行しました。土倉役や酒屋役は、室町幕府の主要な財源の一つであり、これにより幕府は安定した収入を得ることができました。明徳4年（1393年）に定められた法令では、年間6,000貫文が納められることが義務付けられました。

歴史的背景

特に、京都では鎌倉時代後期から土倉や酒屋が急成長を遂げ、さまざまな寺院や貴族たちが税を徴収していました。幕府はこの流れを受け、土倉役を徴収し；代わりに土倉や酒屋は年間一定額の税を納めることになりました。当初は山徒（比叡山延暦寺の衆徒）によって構成された土倉方の一衆がこの役目を果たしていましたが、戦乱や土一揆により包囲される中、幕府は役目を洛中の土倉や酒屋にも広げざるを得なくなりました。

納銭方の役割

「納銭方」という言葉には、納銭の徴収を担当する幕府機関という意味もあれば、納銭そのものやその出納ルート、賦課対象としての土倉または酒屋を指す場合もあります。小野晃嗣や桑山浩然などの研究者たちは、納銭方の位置づけについて異なる見解を持っています。小野は納銭方を幕府機関として捉えましたが、桑山は収納請負機関としての一面を強調しました。

また、五味文彦は納銭方と納銭方一衆を区別し、前者が幕府機関であることを強調しました。このように、納銭方は名称からも推測できるように、納銭徴収を行う重要な組織であったのです。

納銭方の運営

納銭方は、京都の土倉や酒屋からの納税を組織的に管理し、納税者が指定された金額を納めるための責任者を任命しました。この役割を果たすのが納銭方一衆と呼ばれ、彼らは土倉役や酒屋役の徴収を担当しました。特に有力な業者が責任者となることが多く、彼らが徴収した額を幕府に納付する形式を取っていました。

ただ、時間が経つにつれて、山門土倉における徴税能力が失われ、次第に俗人の酒屋がこれに加わるようになります。

財政難と改革

6代将軍足利義教が在任中には、朝廷への贈与を巡って深刻な財政難が発生しました。このため、土倉役の免除や徴収方法の変更が行われ、中には新興業者も課税対象に含められました。これにより、収入を回復させようとする努力が続けられましたが、実際には大きな効果を上げることはなく、徴税の効率が著しく低下していきました。

室町幕府の衰退

応仁の乱の影響を受け、納銭方はますます機能不全に陥ります。戦乱によって徴収機関が分散し、税収が減少していく中、幕府は新たな課税対象を模索し続けましたが、最終的な改革は成功を収めませんでした。1552年には「正実坊」が徴税に関する権限を独占する事態に至り、税収を安定させるためにはさらなる改革が求められる状況が続きました。

結論

最終的に、納銭方は1573年の室町幕府解体と共に廃止され、その機能は後の時代に織田政権によって継承されることとなります。納銭方が果たした役割は、当時の社会経済の仕組みを理解する上で重要な要素であり、室町時代の歴史的背景を知る手がかりといえるでしょう。

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