紙幣類似証券取締法

紙幣類似証券取締法（明治39年法律第51号）は、紙幣と似た作用や機能を持つ証券の発行や流通を取り締まることを目的とした日本の法律です。

この法律は、紙幣に類似した証券が濫発されることによる経済的な混乱を防ぐために制定されました。具体的には、第一条において、以下の2つのケースに該当する証券を規制の対象としています。

1. 一様な形式を持ち、個々の取引に基づかずに金額が定められ、多数に発行される証券で、紙幣類似の機能を持つと認められるもの
2. 一様な価格を表示し、物品の給付を約束する証券

これらの証券について、財務大臣は発行や流通を禁止する権限を持ちます。

条文の概要

第一条：

財務大臣は、紙幣類似の作用をなす証券の発行や流通を禁止できる。
物品の給付を約束する証券についても同様に禁止できる。

第二条：

財務大臣が証券の発行や流通を禁止した場合は、その旨を公告する。
禁止の公告後に発行または流通させた証券は無効となる。

第三条：

禁止に違反して証券を発行・授受した者は、1年以下の懲役または1000円以下の罰金に処せられる。
違反した証券は没収される。
流通目的で証券を授受した者も同様の罰則を受ける。

第四条：

禁止の公告後に発行または流通目的で授受された証券は、裁判による没収を除き、行政処分によって没収される。

地域通貨との関連

地域通貨は、特定の地域でのみ使用できる通貨であり、この法律の適用対象となる可能性があります。過去には、地域通貨が円以外の通貨名を用いたり、有効期限を定めたり、会員限定で使用可能としたりすることで、法的な問題を回避する事例が見られました。

ただし、第一条の規定は、財務大臣が必ず禁止する義務を課しているわけではありません。財務省は2003年2月に、以下の条件を満たせば「紙幣類似証券取締法」に違反しないという方針を示しました。

複数回流通は登録事業者間に限る
換金は登録事業者が指定金融機関で行う

この方針に基づき、一部地域では円建ての地域通貨が発行されています。

法律の改正

刑法施行法（明治41年法律第29号）19条1項・2条により、本法の「重禁錮」は「懲役」に改められました。

関連法規

偽札
通貨偽造罪
通貨及証券模造取締法
外国ニ於テ流通スル貨幣紙幣銀行券証券偽造変造及模造ニ関スル法律
* すき入紙製造取締法

まとめ

紙幣類似証券取締法は、紙幣に似た証券の発行と流通を規制することで、経済の安定を維持するために重要な役割を果たしています。地域通貨の運用にあたっては、この法律を遵守し、適切に対応する必要があります。

この法律は、単に通貨を規制するだけでなく、金融取引における信頼性を保つための重要な基盤ともなっています。財務大臣が持つ広範な権限は、金融システム全体を監視し、不正行為を防ぐための重要な要素です。この法律の理解は、金融経済活動に関わるすべての人にとって不可欠と言えるでしょう。


e-Gov法令検索 - 紙幣類似証券取締法

もう一度検索