外国ニ於テ流通スル貨幣紙幣銀行券証券偽造変造及模造ニ関スル法律

「外国ニ於テ流通スル貨幣紙幣銀行券証券偽造変造及模造ニ関スル法律」（明治38年法律第66号）は、1905年3月20日に公布・即日施行された、外国で流通する貨幣、紙幣、銀行券、証券などの偽造、変造、模造を取り締まることを目的とした日本の法律です。この法律は、国際的な金融秩序を維持し、偽造通貨の流通を防止するために制定されました。

法律の概要

この法律の主な目的は、外国で流通している貨幣や紙幣、証券などの偽造、変造、模造行為を規制することです。ここでいう外国紙幣等とは、刑法第149条の通貨偽造罪に該当しないものを指します。つまり、この法律は刑法でカバーされない範囲の模造行為を取り締まることを意図しています。

刑罰の変遷:

この法律が制定された当初は、「重懲役」「軽懲役」「重禁錮」といった刑罰が規定されていましたが、刑法施行法（明治41年法律第29号）第19条第1項により、これらの刑罰は「懲役（2025年6月1日以降は拘禁刑）」に改正されました。また、罰金刑についても、罰金等臨時措置法（昭和23年法律第251号）第2条によって金額が変更され、引き上げられました。これにより、時代の変化や貨幣価値の変動に対応した刑罰体系へと見直されています。

未遂罪の処罰:

第1条の規定は重罪であるため、刑法施行法により、未遂罪も処罰されるという特例が設けられています。これは、偽造行為が未遂に終わった場合でも、その危険性を考慮して処罰対象とするものです。

自首による刑の免除:

第8条では、この法律に規定された罪を犯した者が、偽造・変造した外国紙幣等を行使する前、または模造した外国紙幣等を他人に渡す前に警察官に自首した場合、刑が免除される規定があります。これは、犯罪者が自発的に罪を償う機会を与えることで、犯罪の未然防止を促す狙いがあります。

外国での処罰と日本の処罰:

第9条には、この法律に規定された罪を犯し、外国で確定裁判を受けた者であっても、日本で再び処罰することを妨げない旨が定められています。ただし、外国で刑の全部または一部が執行された場合は、日本で科せられる刑罰が減刑または免除される場合があります。これは、同一の犯罪行為に対して二重に刑罰が科されることを避けるための措置です。

法律の名称について

この法律の名称は、法令で定められた正式な題名ではなく、便宜的に用いられる件名です。したがって、平仮名や口語体を用いる法令においては、「外国において流通する貨幣紙幣銀行券証券偽造変造及び模造に関する法律」のように引用表記されます。

関連法規

この法律は、以下の関連法規と密接な関係があります。

偽札: 偽造された紙幣全般を指します。
通貨偽造罪: 通貨の偽造を罰する刑法上の罪です。
通貨及証券模造取締法: 通貨や証券の模造を罰する法律です。
紙幣類似証券取締法: 紙幣に類似した証券の取締りを目的とした法律です。
* すき入紙製造取締法: 紙幣に使われる特殊なすき入りの紙の製造を取り締まる法律です。

これらの法律と合わせて、通貨や証券の偽造・模造行為を包括的に規制し、経済活動の安全と信頼性を確保しています。

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