紙衣

紙衣（かみこ、かみころも、かみきぬ、しえ[古語]）とは、和紙を材料として作られた着物のことです。紙子（かみこ）とも呼ばれます。

紙衣の歴史

平安時代中期に和紙が大量生産されるようになり、広く普及しました。それまで主に記録や包装に使われていた紙が、その用途を広げ、衣料としても使われるようになったのが、紙衣の始まりです。和紙は、もともと麻くずを原料として作られており、丈夫で加工しやすいという特性がありました。この特性が、衣料としての利用を可能にしたと考えられます。

紙衣は、絹の着物に比べて安価であったため、主に低所得者の間で利用されていたと思われがちです。しかし、実際には、その丈夫さや持ち運びの便利さから、武士や俳人など、さまざまな階層の人々に愛用されました。特に、戦国時代の武士は、鎧の下に着ることで防寒や衝撃緩和の効果を期待していました。また、旅をする俳人にとっては、軽くてかさばらない紙衣は重宝されました。

仏教界でも、僧侶が質素倹約を旨とする生活を送る上で、紙衣は好んで用いられました。性空上人や親鸞聖人が愛用していたことでも知られています。これらの歴史的事実から、紙衣が単なる安価な着物ではなく、実用性や機能性を重視した衣服であったことがわかります。

紙衣の製作方法

紙衣の製造には、特別な和紙が使われます。特に、繊維の絡みが強い粘り強い紙が適しており、美濃十文字紙のような上質な厚手の和紙が用いられました。まず、和紙に柿渋を塗っては乾燥させる作業を何度も繰り返します。これにより、紙に強度と撥水性が付与されます。その後、晴れた日に一晩さらして乾燥させ、さらに足で踏んだり、手で揉んだりして柔らかくしてから、裁断し縫い合わせて着物の形に仕立てられます。

紙衣は、その独特な風合いや機能性から、現代でも芸術作品や伝統工芸品として注目されています。また、その歴史的な背景から、日本の文化を語る上で欠かせない存在となっています。

関連項目

* 紙布

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