素敵なおさがり

トムとジェリー『素敵なおさがり』：オシャレと恋のドタバタ劇

1944年2月26日に公開された『素敵なおさがり』（原題：The Zoot Cat）は、トムとジェリーシリーズの中でも人気の高い作品の一つです。監督はビル・ハンナとジョセフ・バーベラ、製作はフレッド・クインビーが務め、個性豊かなキャラクターとテンポの良い展開が魅力の作品となっています。

物語は、トムが恋のライバルであるジェリーを出し抜き、おしゃれをして恋人のトゥーツを口説こうとするところから始まります。トムは、トゥーツに気に入られようと、ジェリーをプレゼントに持参し、ギター演奏で彼女を口説こうとしますが、トゥーツはトムの服装や演奏を「ダサい」と一蹴し、あっさり振ってしまいます。

さらにジェリーからも「田舎臭い」とからかわれ、意気消沈したトムでしたが、ラジオから流れてきた洋服店のCMをきっかけに、ある計画を立てます。彼は、トゥーツの家の電気スタンドカバーを帽子に、ハンモックの生地をズートスーツに仕立て上げ、肩パッドとしてハンガーまで装着するという、大胆なイメージチェンジを図るのです。

自作のズートスーツを着こなしてトゥーツの家を訪れたトムは、見違えるようにおしゃれになった姿でトゥーツを魅了します。トゥーツはトムに夢中になり、二人はダンスパーティを始めますが、そこにジェリーが乱入し、いつものドタバタ劇が始まります。

ピアノの弾き語りを交えながらトゥーツへの愛を告白するトムでしたが、ジェリーはいたずらでそれを邪魔します。トムの怒りもエスカレートする中、ジェリーはトムのスーツに仕込まれたハンガーにブラインドの紐を引っかけます。ジェリーを追いかけるトムはブラインドに巻き込まれ、勢い余って水の入った金魚鉢に飛び込んでしまいます。

すると、ズートスーツは水で縮み始め、あっという間に脱げてしまうのです。そして、ネズミサイズのズートスーツをクールに着こなすのは、なんとジェリーでした。トムの計画は全て裏目に出てしまい、皮肉な結末を迎えます。

この作品の見どころは、トムの恋への執着心と、ジェリーのいたずら好きが高じて巻き起こるドタバタ劇です。トムが恋人を手に入れようとする過程で、様々な工夫やアイデアを凝らしている点も見逃せません。また、ズートスーツという当時の流行を取り入れている点も、時代背景を反映した面白い要素となっています。

さらに、音楽やアニメーションの技術も非常に洗練されており、見ている者を飽きさせません。特に、トムとジェリーのコミカルな動きや表情は、何度見ても笑える魅力があります。

『素敵なおさがり』は、トムとジェリーのキャラクター性と、彼らが織りなすユーモラスな物語が存分に楽しめる作品です。恋とオシャレ、そしてトムとジェリーの定番の追いかけっこが、絶妙に絡み合った、何度でも観たくなる魅力的な短編アニメーションと言えるでしょう。

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