累積投票

累積投票とは

累積投票（英：cumulative voting）は、複数議席を選出する選挙において、有権者が持つ複数の票を特定の候補者へ集中して投票できる選挙制度です。連記投票とは異なり、各候補者への票の配分を自由に調整できる点が特徴です。

制度の概要

累積投票制度下では、有権者は与えられた複数の票を、支持する候補者に自由に割り振ることができます。例えば、3議席を選出する選挙で3票を持つ有権者は、1人の候補に3票すべてを投じることも、複数の候補に1票ずつ投じることも可能です。当選者は、得票数の多い順に決定されます。

歴史

累積投票は、19世紀にJames Garth Marshallによって提唱され、ケープ植民地やアメリカのイリノイ州下院などで採用されました。2012年時点では、アメリカ合衆国の50以上の自治体で利用されています。これらの自治体での導入は、投票権法に基づいた訴訟の結果であることが多いです。ニューヨーク州ポートチェスターでは、2009年の訴訟を受け、2010年に初の累積投票による評議員会選挙が行われました。

特徴

累積投票の最大の特徴は、少数派の意見を代表する候補者を当選させやすい点にあります。n議席を選出する選挙においては、有権者全体の1/(n+1)を超える支持を集めれば、他の有権者の動向に関わらず、確実に1議席を獲得できます。このため、累積投票は少数代表制の選挙制度として分類されます。

林田亀太郎は、日本の衆議院選挙に単記非移譲式投票を導入する際、イリノイ州の累積投票を参考にしました。

利用

株式会社における取締役の選任

累積投票は、株式会社の取締役選任においても利用されることがあります。会社法342条によれば、複数の取締役を選任する場合、定款に特段の定めがない限り、株主の請求によって累積投票を行うことができます。この場合、株主は保有する株式数に選任する取締役の数を掛けた数の議決権を持ち、これを特定の候補者に集中させることができます。ただし、多くの日本企業では、定款で累積投票を排除しています。

日本の会社法における累積投票制度は、1950年の商法改正によりアメリカ法の影響を受けて導入されました。

公的機関

アメリカ合衆国の一部の自治体では、公的機関の役員選出に累積投票が用いられています。イリノイ州下院では、1870年から1980年まで、3人を選出する選挙区において、1人あたり3票の累積投票によって議員が選出されていました。

関連項目

選挙制度
少数代表制
* 会社法

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