ラ・ガゼット・デュ・シネマ

短命に終わった映画批評誌『ラ・ガゼット・デュ・シネマ』：ヌーヴェルヴァーグの胎動と挫折

1950年5月から11月までのわずか半年、フランスで発行された映画雑誌『ラ・ガゼット・デュ・シネマ』。その短い歴史の中に、後のヌーヴェルヴァーグを牽引する中心的映画作家たちの活動と、映画批評のあり方を探る上で重要な足跡が刻まれています。

この雑誌の源流は、パリ・カルティエ・ラタンで開かれていたシネクラブ「シネクラブ・デュ・カルティエ・ラタン」に遡ります。リセ教師であったエリック・ロメールが解説者を務めていたこのシネクラブは、入手困難な映画作品を上映することで知られていました。1930年代のアメリカ映画を中心に、あらゆる作品を上映し、アカデミックなシネクラブとは一線を画す姿勢を持っていました。ロメールは、このシネクラブを「傑作」と「そうでないもの」の区別をせず、多様な映画を提示する場として位置づけていました。

このシネクラブから生まれたのが『ラ・ガゼット・デュ・シネマ』です。ロメールは、ジャック・リヴェット、フランシス・ブーシェらと共に、シネクラブの機関誌をより本格的な批評誌へと発展させました。リヴェットは既に機関誌にモンタージュ映画に関する注目すべき記事を寄稿しており、彼にとっての重要な発表の場でもありました。

『ラ・ガゼット・デュ・シネマ』は、知的な映画愛好家たちが現代映画について議論する場として機能しました。リヴェットは数多くの記事を発表し、ジャン＝リュック・ゴダールもハンス・リュカス名義で寄稿しています。一方、フランソワ・トリュフォーは本誌には参加していませんでした。

わずか5号の発行で幕を閉じたこの雑誌には、ロメールによるロベルト・ロッセリーニ監督作品『ストロンボリ』の論評、ゴダールによるジョーゼフ・L・マンキーウィッツ監督作品『他人の家』、エリア・カザン監督作品『暗黒の恐怖』、セルゲイ・エイゼンシュテイン監督作品『メキシコ万歳』、マックス・オフュルス監督作品『輪舞』などの論評、リヴェットによるジャン・ルノワール監督作品『南部の人』、ジャン・コクトー監督作品『オルフェ』、アルフレッド・ヒッチコック監督作品『山羊座のもとに』などの論評、さらにはジャン・ドゥーシェ、ジャン・ドマルキ、アレクサンドル・アストリュック、ジャン＝ポール・サルトル、ジャック・ドニオル＝ヴァルクローズといった著名人による記事も掲載されました。

『ラ・ガゼット・デュ・シネマ』が短命に終わった理由は、キオスクでの販売ではなく、シネクラブ会員への限定配布という形態をとっていたためです。最初の数号は利益を上げることができましたが、継続的な運営は困難でした。実際には、『カイエ・デュ・シネマ』の創刊準備が進む中で、その動きに合流する形で『ラ・ガゼット・デュ・シネマ』は廃刊となりました。『カイエ・デュ・シネマ』創刊翌年には、関係誌『レクラン・フランセ』も廃刊しています。

このように『ラ・ガゼット・デュ・シネマ』は短命に終わりましたが、後のヌーヴェルヴァーグを担う映画作家たちの初期の活動を知る上で重要な資料であり、その存在は映画批評史において特筆に値します。わずか半年という短い期間に、多くの重要な論考が掲載されたこの雑誌は、ヌーヴェルヴァーグ誕生以前の映画批評の潮流を理解する上で貴重な証言となっています。

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