紺屋関駅

紺屋関駅：大津線の歴史を刻んだ小さな駅

滋賀県大津市白玉町に存在した紺屋関駅は、鉄道院大津線に属する旅客駅でした。貨物輸送は扱わず、大津線の旅客営業廃止と東海道本線の貨物支線への転換を機に、1913年（大正2年）3月1日にその歴史に幕を閉じました。

開業から廃止まで：短いながらも変化に富んだ歴史

紺屋関駅が開業したのは1902年（明治35年）1月1日。当初は馬場駅と大津駅間の乗客のみを扱う小さな駅でした。開業時の駅間距離は、石場駅から紺屋関駅間が約0.8km、紺屋関駅から大津駅間が約0.4kmと、非常に短い区間でした。

同年11月12日には哩程表示が変更され、より精緻な距離表示となりました。その後、1909年（明治42年）10月12日には国有鉄道線路名称制定により、正式に大津線の駅となりました。

1910年（明治43年）3月15日には、旅客営業の範囲が拡大され、他路線からの乗客も利用できるようになりました。しかし、この賑わいも長くは続かず、わずか3年後、大津線の旅客営業は廃止されます。

大津線の旅客営業廃止の背景には、大津電車軌道（現在の京阪石山坂本線）の進出がありました。同社は1912年（明治45年）5月1日に鉄道院から線路の貸下げを許可され、大津線と線路を共用することになりました。そして、1913年（大正2年）3月1日、大津電車軌道が開業すると同時に、大津線の旅客営業は廃止され、紺屋関駅も閉鎖されました。大津線の路線は貨物支線として東海道本線に編入されました。

紺屋関駅跡地付近には、大津電車軌道によって紺屋ヶ関停留所が設置されましたが、1943年（昭和18年）11月10日に廃止されています。しかし、「紺屋ヶ関」という地名は、現在でも京阪石山坂本線踏切名としてその名残をとどめています。

利用状況と周辺環境

『滋賀県統計全書』には、紺屋関駅の年間乗降人員に関するデータが記録されています。残念ながら、具体的な数値は本稿では割愛させていただきます。

紺屋関駅周辺には、紺屋関港がありました。紺屋関港は、湖南汽船（現在の琵琶湖汽船）の乗船場として利用されていました。江戸時代より荷上場として使われていたこの地は、1872年（明治5年）に紺屋関会社（湖南汽船の前身の一つ）によって港として整備され、対岸との航路の拠点として発展しました。

隣の駅

紺屋関駅に隣接する駅は以下の通りです。

石場駅
大津駅

まとめ

紺屋関駅は、短い期間ながらも大津線の歴史において重要な役割を果たした駅でした。その存在は、大津線の変遷、そして大津電車軌道との関わりを知る上で重要な手がかりとなります。また、周辺の紺屋関港の歴史と合わせて考察することで、この地域の交通史の一端を垣間見ることができます。

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