紺野陽吉

紺野陽吉

紺野陽吉（こんの ようきち、1913年5月16日 - 1945年10月3日）は、山形県西置賜郡東根村（現在の白鷹町）出身の作曲家です。彼は、医師の家系に生まれましたが、医学の道には進まず、音楽への情熱を追求しました。彼の生涯は、音楽への愛と戦争の悲劇によって彩られています。

生涯

紺野陽吉は、1913年に山形県で生まれました。彼は6人兄弟の次男で、幼い頃から音楽に親しんで育ちました。県立長井中学校を卒業後、医学の道を望む家族の期待に反して上京し、音楽の道へ進みます。立教大学交響楽団やコンセール・ポピュレールなどのセミプロ楽団でヴァイオリンを演奏し、ポピュラー音楽のレコード録音の伴奏で生計を立てていました。しかし、1941年、太平洋戦争が開戦すると、紺野は召集され、翌年戦地に赴くことになります。

戦地へ向かう前、紺野は作曲家の清瀬保二を訪ね、自作の3曲の楽譜を託しました。清瀬は新興作曲家連盟の中心人物であり、多くの作曲家から信頼されていました。清瀬は紺野から託された楽譜を戦時中、防空壕で大切に保管していました。しかし、終戦から2ヶ月後の1945年10月3日、紺野は中国東北部の旧満州海林の収容所内病院で32歳という若さで戦病死しました。彼の死は、10年後の1955年に実家に伝えられましたが、その時両親はすでに他界していました。

作品の発見

紺野の作品は、彼の死後、長い間忘れ去られていました。しかし、終戦から50年後の1995年、音楽評論家の小宮多美江が清瀬保二の資料を整理していた際、偶然紺野の作品が入った封筒を発見しました。小宮は、以前から清瀬の研究に取り組んでおり、日本近代音楽館に収蔵されていた清瀬の資料を調査する中で、紺野の楽譜を見つけたのです。「紺野陽吉君遺稿」と書かれた封筒の中には、「木管三重奏曲」「弦楽二重奏曲」「弦楽三重奏曲」の手書き譜が入っていました。

作品

紺野の作品は、いずれも音楽の世界社から出版されており、以下のものがあります。

弦楽二重奏曲 (Violin, Cello):
Moderato
Andante cantabile
Allegro ma non troppo
木管三重奏曲 (Flute, Clarinet, Bassoon):
Allegro ma non troppo
Andante
Allegro
弦楽三重奏曲 (Violin, Viola, Cello):
Allegro ma non troppo
Andante cantabile
Allegro ma non troppo con leggiero

これらの作品は、紺野の音楽的才能と繊細な感性を今に伝えています。

作品演奏会と録音

作品発見から16年後の2011年、小宮のもとに紺野の「弦楽三重奏曲」についての問い合わせがあり、それをきっかけに楽譜の整備が進められました。2012年4月28日には、紺野の故郷である山形市文翔館ホールにて、山形弦楽四重奏団によって「弦楽三重奏曲」の第2楽章が演奏されました。

同年9月30日には、明治学院大学白金キャンパスアートホールで開催されたコンサートで、紺野陽吉 (安藤久義補作) 「弦楽トリオ」が初演されました。この曲は終楽章の最後が未完であったため、清瀬保二の弟子である安藤久義が補作しています。

2013年1月14日には、紺野陽吉生誕百年記念演奏会が山形弦楽四重奏団によって開催され、「弦楽三重奏曲」が演奏されました。その後も、国内外で彼の作品は演奏され続けています。

2014年4月28日には、紺野の作品3曲の録音が行われ、ミッテンヴァルトからCDが発売されました。



紺野陽吉の作品は、戦火に散った作曲家の才能を現代に蘇らせ、その音楽は聴く人の心を深く揺さぶります。彼の短い生涯は、音楽への情熱と戦争の悲劇を象徴しており、その作品は今後も大切に演奏され、後世に語り継がれていくでしょう。

脚注

出典

関連項目

清瀬保二
日本近代音楽館

外部リンク

戦後七十年、五線紙から蘇る-紺野陽吉の音楽 - NDL ONLINE (2021年2月23日閲覧)
紺野陽吉作品の演奏記録 - Readyfor (2021年2月23日閲覧)
* 音楽の世界社 (2021年2月23日閲覧)

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