終りなき夜に生れつく

終りなき夜に生れつく

『終りなき夜に生れつく』は、1967年にアガサ・クリスティによって発表された推理小説です。タイトルには、ウィリアム・ブレイクの詩「無垢の予兆」が引用されており、人生の暗い運命を示唆しています。物語は、貧しい運転手の青年が富豪の娘と恋に落ちた後の波乱に満ちた展開を描いています。

あらすじ

物語はマイケル・ロジャースの視点で語られます。マイクはしがない運転手で、いつか有名な建築家ルドルフ・サントニックスに家を建ててもらいたいと夢見ています。ある日、彼は「ジプシーが丘」という不気味な伝説を持つ場所で、エリーというアメリカ人の若い女性と出会います。二人はたちまち惹かれ合い、恋に落ちます。

エリーは実は大富豪の娘だと分かり、彼女はマイクの夢を実現させようと結婚を申し出ます。二人は結婚し、サントニックスに邸宅の設計を依頼します。新しい生活を始める中で、彼はエリーの親友グレタに対して嫉妬心を抱くようになります。彼女はエリーの世話をしている完璧な女性で、マイクは自信を失っていきます。

物語はエリーの変死という悲劇的な出来事へと進展します。エリーは乗馬中に事故に遭い、死因はショック死と発表されますが、地元のジプシー老女リーが呪いをかけたのではないかとの噂が流れます。リーは後に行方不明になり、採石場で遺体が発見されるなど、村全体が不穏な空気に包まれます。

マイクはエリーを失った悲しみを抱え、再びグレタのもとへ戻ることにします。しかし、彼とグレタの間には陰謀が隠されていました。彼らはエリーの富を狙い、計画的に彼女を殺害したのです。マイクはエリーのアレルギー薬に毒を盛り、病気の彼女を仕組んで亡き者にしたのです。

謀略の発覚

悪事が成功したかに見えた二人ですが、思わぬところから目撃証言や証拠が次々と明るみに出ます。特に、マイクがグレタと共に写った写真がエリーの後見人に送られ、二人は危機に直面します。マイクは情緒不安定となり、最終的にはグレタを殺害するに至ります。この一連の事件は彼にとっても彼女にとっても悲劇的な結末を迎えることとなります。

最後に、物語はマイクが逮捕された後の彼の視点から再構成され、警察の圧力の中で書かれたことが示されます。彼の語りは、クリスティ独特のサスペンスと緊張感を持ったものとなっており、読者を引き込む力を持っています。

登場人物の紹介

• - マイケル・ロジャース: 主人公であり、この物語の語り手。エリーと恋に落ちて結婚。
• - ルドルフ・サントニックス: マイクの友人であり、建築家。
• - エリー・グットマン: 大金持ちの娘でマイクの妻。
• - グレタ・アンダーセン: エリーの世話係でマイクの嫉妬対象。
• - リー: 村のジプシー女性で、呪いの警告をする。

作品の評価

著名な批評家からの評価は非常に高く、クリスティの新たな作風を称賛する声が多数寄せられました。本作は、サスペンスフルでありながらも心に残るストーリーで、クリスティの中でも特に強い影響を持つ作品とされています。また、後に映画化やテレビドラマ化もされており、作中の描写と雰囲気を再現するために多くの試みがなされています。『終りなき夜に生れつく』は、恋愛と裏切りが交錯する物語として、多くの読者の心に残り続けることでしょう。

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