経済統合

経済統合（けいざいとうごう）または経済一体化とは、複数の国や地域が、関税や貿易障壁といった経済的な障壁を取り除き、市場を統合していくプロセスのことを指します。この統合は、単なる貿易の自由化にとどまらず、投資や労働力の移動の自由化、さらには経済政策の調整まで、様々な段階を経て深化していきます。

経済統合の段階

経済統合の段階は、アメリカの経済学者ベラ・バラッサによって以下のように分類されています。

1. 自由貿易地域（FTA）: 加盟国間での関税やその他の貿易障壁を撤廃します。ただし、非加盟国に対しては、各国がそれぞれ独自の関税率を設定します。NAFTA（北米自由貿易協定）がこの段階にあたります。

2. 関税同盟: 自由貿易地域に加え、非加盟国からの輸入に対して共通の関税を設けます。この段階では、加盟国間で統一的な貿易政策がとられるようになります。

3. 共同市場: 関税同盟に加え、労働力や資本といった生産要素の移動の制限も撤廃します。EU（欧州連合）が、この段階を目指した市場統合の取り組みとして、規格や職業資格の相互認証、関連する経済法制の調整を重視しました。

4. 経済同盟: 共同市場を基礎とし、加盟国間で経済政策の調整が実施される段階です。EUは、1999年に単一通貨ユーロを導入したことで、経済政策の協調を進めています。

5. 完全な経済統合: 経済同盟に加え、政治的な統合も含む最も高度な段階です。この段階は、現在、どの地域でも実現していません。

経済統合の深化

これらの段階は、統合の深さによって以下のように整理できます。

部分的統合：
特恵貿易地域
自由貿易協定
通貨同盟
全面的統合：
関税同盟
共同市場
経済同盟
関税通貨同盟
経済通貨同盟
財政同盟
完全な経済統合

経済統合の理論と目標

経済統合に関する理論としては、「関税同盟の理論」や「Kemp and Wan定理」などが挙げられます。これらの理論は、貿易障壁を撤廃することによって、経済的な利益を得ることを目的としています。

しかし、経済統合の波及効果は、経済的な利益だけではありません。各国間の関係が緊密化することによって、関係が安定し、経済発展によって政治的な安定ももたらされます。日本がASEANや韓国とのFTA締結に積極的な理由も、経済的な利益と同時に、これらの効果を期待しているからです。例えば、NAFTAは、メキシコの経済発展に大きな影響を与えたことが好例として挙げられます。

経済統合は、単なる貿易の自由化にとどまらず、より広範な経済的、政治的な目標を達成するための重要な手段となり得ます。様々な段階を経て、各国は経済的な繁栄と安定を追求しています。しかしながら、完全な経済統合は未だ実現しておらず、その道のりは長く険しいと言えるでしょう。

関連項目

欧州連合
欧州連合の経済通貨統合
* 貿易圏

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