経皮的椎体形成術

経皮的椎体形成術（PVP）とバルーン椎体形成術（BKP）：圧迫骨折治療の革新

近年、高齢化社会の進展に伴い増加傾向にある圧迫骨折。従来はコルセットなどによる保存的療法が中心でしたが、強い痛みが長期間続くケースも多くありました。そこで注目されているのが、経皮的椎体形成術（PVP）とバルーン椎体形成術（BKP）です。これらの手術は、圧迫骨折でつぶれた椎骨にセメントを注入して形状を修復する治療法であり、高い除痛効果が期待できます。

経皮的椎体形成術（PVP）とは？

PVPは、圧迫骨折で損傷した椎体に直接、骨セメントを注入して固定する低侵襲手術です。1984年にフランスで開発され、その後アメリカで普及、日本でも1997年に導入されました。セメントの注入により椎体の安定性が向上し、痛みを軽減する効果が期待できます。手術時間は一椎骨あたり約30分と短く、患者の負担も比較的少ない点が特徴です。

バルーン椎体形成術（BKP）の特徴

BKPはPVPをさらに進化させた技術です。特殊なバルーンカテーテルを用いて、つぶれた椎体を元の形状に近づけてから骨セメントを注入します。これにより、椎体の復元がより効果的に行われ、疼痛軽減や姿勢改善に繋がる可能性があります。日本では2011年1月より健康保険が適用されており、より多くの患者さんがアクセスできるようになりました。ただし、急性期の適用外であり、骨折から8週間経過後、痛みや変形が残存する場合に適応となります。

手術の内容

BKPの手術は、まず局所麻酔または全身麻酔を行い、X線透視下で細い針を椎体まで挿入します。その後、バルーンカテーテルを挿入し、バルーンを膨らませて椎体の形状を修復します。バルーンを抜去後、骨セメントを空洞に注入し、固まるのを待ちます。セメントは通常20分ほどで硬化します。皮膚への小さな切開だけで済むため、術後の傷跡は小さく、入院期間も平均1週間程度と短期間で済みます。

効果とリスク

PVPおよびBKPは、多くの患者において著明な痛みの軽減をもたらします。発症後3ヶ月以内の急性期に最も効果が出やすいとされていますが、近年では慢性期の症例にも有効性が認められるようになってきました。しかし、全ての患者さんに効果があるわけではなく、セメント漏出による肺塞栓やショック死といった稀なリスクも存在します。

使用される骨セメント

一般的に使用される骨セメントは、アクリル樹脂（PMMA）です。PMMAはX線透過性が高いので、視認性を高めるためにバリウムが添加されることもあります。

保険適用と普及状況

日本ではBKPが健康保険の適用となっており、治療費の負担が軽減されました。アメリカでは2003年には7万人、2004年には10万人がこの治療を受けているなど、世界的に普及が進んでいます。

今後の展望

PVPとBKPは、圧迫骨折治療において画期的な進歩をもたらしました。しかし、更なる安全性と有効性の向上が求められています。技術の進歩により、より精度の高い治療、そしてより多くの患者さんへの恩恵が期待されます。また、治療効果に関する情報発信の透明性も重要です。

まとめ

PVPとBKPは、高齢者に多い圧迫骨折に対する有効な治療法です。手術は低侵襲で、短期間の入院で済むことが多いため、患者の負担を軽減できます。しかし、稀なリスクも存在するため、医師との十分な相談の上、治療法を選択することが重要です。

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