経験論

経験論について

概要

経験論（けいけんろん）または経験主義（けいけんしゅぎ）とは、「人間の知識は全て経験に基づく」と考える哲学的な立場です。特に、感覚や知覚に基づく経験を重視する立場は「感覚論」と呼ばれます。この概念は、主に17世紀から18世紀の近代哲学における議論から生まれました。ここでは、イギリスを中心とする経験主義と、欧州大陸の理性主義（合理主義）との対立が見られます。経験論は、知識の源を理性に求める理性主義や、認識が直観的にもたらされる直観主義、さらには形而上学に対して批判的な立場を取ります。

経験論の重要性

経験論の中での「経験」という言葉は、個人的な体験ではなく、客観的で公的な実験や観察に重きを置いています。したがって、個々の経験に基づく判断が経験論的であるという理解は誤解を招くことがあります。

歴史的背景

古代

古代ギリシャのソフィストやデモクリトスのような哲学者たちは、知覚経験を重視したため、経験論に分類されます。一方で、ピタゴラス学派やプラトンは知識は経験を超えたものと考え、対立する立場を取っていました。プラトンの学弟アリストテレスは、両者をうまく統合したとされています。

中世

中世に入ると、オックスフォード学派の思想家たちが経験を重視し、数学や自然哲学の発展に寄与しました。ロジャー・ベーコンは実験の重要性を強調し、オッカムは具体的な感覚経験を認識の源泉として位置づけました。この流れが近世の経験論へとつながります。

近世

16世紀に入って、フランシス・ベーコンは経験的観察を基にした帰納法の重要性を説き、自然科学の展開を後押ししました。一方、デイヴィッド・ヒュームは、経験論から懐疑主義へと発展させていきました。

近代経験論の確立

17世紀では、ジョン・ロックが「タブラ・ラーサ」（白紙）説を提唱し、知識は経験を通じて得られると批判しました。彼の影響を受けたバークリーやヒュームも同様の立場を取ります。

功利主義

18世紀には、ジェレミー・ベンサムが経験に基づく倫理学を展開し、幸せに向かう行動の原則を定めました。彼は「最大多数の最大幸福」を主張し、倫理的判断の基準として経験を重視しました。

現代の展開

18世紀以降、経験論はカントの批判哲学によって大陸合理論と融合し、ドイツ観念論の影響を受けていきました。現象主義、実証主義、論理実証主義が登場し、特に論理実証主義は形而上学的な理論を批判しました。

重要な論者

主な経験論の論者には、フランシス・ベーコン、ジョン・ロック、ジョージ・バークリー、デイヴィッド・ヒュームなどが存在します。彼らの思想は、科学的方法や現代の哲学に大きな影響を及ぼしました。

まとめ

経験論は、私たちの知識がどのように形成されるのか、どのように世界を認識するのかという根本的な問題に取り組む哲学的立場であり、今日の科学や倫理学にも多大な影響を与えています。

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