結城 登美雄の全貌
結城登美雄(ゆうき とみお)は
1945年に旧
満洲国で生まれ、その後日本に帰国し、
山形県大江町で育ちました。彼のふるさとである田代集落は、かつて標高450メートルの山中に9軒の家がありましたが、1960年代から1970年代にかけて多くの住民が村を離れ、人口が大幅に減少しました。寒冷な冬に雪が2メートルにもなるこの地域では、自給自足のための作物やタバコの栽培が主な生計手段となっていました。このような厳しい環境で育った結城は、村人たちの努力と笑顔を忘れることがありませんでした。
彼は
山形大学を卒業した後、広告デザイン業界に勤務し、顧問として(有)タス・デザイン室に籍を置きました。その後、民俗研究家としての道を歩み始め、
東北地方の農山漁村をフィールドにして地域の人々との対話を重視する地元学を提唱することとなります。具体的には、宮城県旧宮崎町での「食の文化祭」や旧北上町での「宮城食育の里づくり」、鳴子町での「鳴子の米プロジェクト」など、地域振興活動に深く関わりました。
地元学の提唱者である結城は、この学問が異なる人々とのコミュニケーションを促す場であるべきだと主張しています。彼は、理念の正当性をこだわることなく、多様な意見や考えを持ち寄り、互いに理解を深めていくことの重要性を説いています。暮らしの現場は急激には変わらず、地元の実情に寄り添った具体的な学びが求められるとの考えを示しています。
また、著名な民俗研究家である森千鶴子は、結城の地域観に着目し、彼の半生を辿ることで地元学の思想と背景を明らかにしています。特に、山形での幼少期に経験した挙家離村の体験や、農民大学運動の指導者との出会いが、結城の地域観の礎となったことが強調されているのです。
結城の活動は多岐に渡り、彼は2004年に芸術選奨文部科学大臣賞を受賞し、2023年には第75回NHK放送文化賞を受賞しました。これらの賞は、彼の活動が地域文化やコミュニティに与えた影響を証明しています。
彼の著書も数多くあり、主なものとして『うおッチング 南三陸の浜をゆく』や『地元学からの出発』、さらには『東北を歩く』シリーズが挙げられます。これらの著作では、地域の人々の声を大切にし、共に生きる文化の重要性が描かれています。
結城登美雄の仕事は、地域の自然環境や文化的背景を理解した上で、人々の声を尊重し、新たなコミュニティづくりに尽力する姿勢を表しています。彼の取り組みは、地域を活性化し、未来へと繋がる知恵を育む源となっています。