結崎ネブカ

結崎ネブカ：幻から復活した大和野菜の逸品

奈良県川西町結崎地区で生産される結崎ネブカは、ユリ科の野菜、葉ネギの一種です。室町時代から続く歴史を持ち、大和盆地で広く栽培されていましたが、栽培の難しさから一時、絶滅寸前にまで追い込まれました。しかし、地元の熱意によって復活を遂げ、現在では希少な大和野菜として高い評価を受けています。

歴史：伝説と復活劇

結崎ネブカの起源は、室町時代に遡ると言われています。川西町結崎には、天から翁の面とネギが降ってきたという伝説が残り、このネギが結崎ネブカの始まりであるとされています。別の伝説では、猿楽師・結崎清次が京都での御前演奏を成功させるため祈願した際、夢に現れた翁の面とネギが、実際に降ってきたという物語も伝えられています。

1736年（享保21年）の『大和志』には、「結崎荘味甚美」と記され、その美味しさは古くから知られていました。戦後しばらくは盛んに栽培されていましたが、柔らかさゆえに傷みやすく、市場流通には適さず、栽培は徐々に衰退。自家用で細々と栽培されるのみとなり、市場から姿を消し、絶滅したと思われていました。

しかし2002年、地元の生産農家、川西町商工会、JAならけん川西支店が連携し、「幻の結崎ネブカ復活プロジェクト」を立ち上げました。一人の農家が保存していたわずかな種から栽培を再開し、見事に復活。2005年には登録商標を取得し、同年、大和野菜に認定されました。2010年には地域団体商標も登録され、現在では「懐かしい味」「ネギ本来の味」と評判を呼び、市場に出回るようになりました。

特徴：柔らかく、甘い、そして栄養豊富

結崎ネブカの最大の特徴は、その柔らかさと甘さです。一般的な葉ネギとは異なり、緑葉部はとろけるような柔らかさで、濃厚な甘みと独特の風味を持ちます。薬味としてだけでなく、煮炊き物にも最適です。

栄養価も高く、通常の青ネギに比べ、灰分、カリウム、β-カロテンを多く含んでいます。8月末から出回り始め、10月が最盛期で2月頃まで楽しむことができます。

利用法：幅広い料理に活用

火を通すと甘みが増し、ネギの臭みが少なくなるため、子供にも食べやすいのが特徴です。薬味としてはもちろん、ネギ焼き、ぬた和え、すき焼き、焼き鳥、鴨鍋、味噌汁、豚汁、豆腐の味噌ネギ焼き、たこ焼き、グラタンなど、その用途は多岐にわたります。戦前の大和では、「かしわのすき焼き」に結崎ネブカを加えることが最高の贅沢とされていました。

その他：地域を挙げての取り組み

大和野菜の名称はひらがなで表記されるのが一般的ですが、結崎ネブカのみカタカナ表記です。これは、川西町が率先して商標登録などに取り組んだことによるものです。

また、イメージキャラクター「ネッピー」も作られ、パッケージや関連商品にも使用されています。2015年には、大相撲の優勝力士への奈良県知事賞の副賞として、結崎ネブカを使った「ちゃんこ大和づくし」が贈られるなど、地域を挙げての取り組みが活発に行われています。

結崎ネブカは、地元の努力と伝統によって復活を遂げた、希少で価値の高い野菜です。その独特の風味と柔らかさは、多くの食卓を彩り、これからも多くの人々に愛され続けることでしょう。

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