大和野菜

大和野菜：奈良の風土が育む伝統野菜

大和野菜とは、かつての奈良県、すなわち大和国で栽培されてきた野菜のうち、奈良県農林部によって認定されたものを指します。これらの野菜は、奈良盆地、大和高原、吉野山地といった多様な地形と気候の中で育まれ、独特の風味と歴史を育んできました。

大和野菜の概要

奈良県は、変化に富んだ地形と内陸性気候により、昼夜の寒暖差が大きいため、多様な農作物が育つ好条件を備えています。古くから国の中心地であった大和国には、全国各地から様々な物品が集まり、その中には農作物も含まれていました。これらの農作物は、地域の食文化に根付き、大和野菜として独自の発展を遂げてきたのです。

しかし、栽培や収穫に手間がかかるため、大規模生産や流通には不向きな面もありました。高度経済成長期以降は、一般的な品種が主流となり、大和野菜は徐々に姿を消していきました。

大和野菜の復活と振興

1991年、奈良県農林部は「大和まな」と「祝だいこん」の取り組みを開始し、その後も「宇陀ごぼう」や「丸なす」などの支援を決定しました。これらの取り組みは一時中断されましたが、2002年に川西町商工会が「結崎ネブカ」の復活に着手したことをきっかけに、再び注目を集めるようになりました。

2004年には、県が「大和野菜振興対策事業」を策定し、地域で大切に自家採種されてきた固有の伝統野菜を次世代に残し、地域おこし、地産地消、地域ブランド化、観光・飲食産業への活用、遺伝資源の保存などを目指すこととなりました。

2005年10月5日には、在来種である「大和の伝統野菜」10品目と、栽培などに工夫を加えた「大和のこだわり野菜」4品目が「大和野菜」として認定されました。その後も追加指定が行われ、2014年末現在では、「大和の伝統野菜」20品目、「大和のこだわり野菜」5品目が認定されています。また、指定されていない在来野菜も約30品目確認されています。

大和の伝統野菜

大和の伝統野菜は、以下の条件を満たすものとして定義されています。

戦前から奈良県内で生産が確認されている品目
地域の歴史・文化を受け継いだ独特の栽培方法により「味、香り、形態、来歴」などに特徴を持つもの

大和の伝統野菜の例

根菜類：宇陀金ごぼう、祝だいこん、片平あかね、筒井れんこん
いも類：大和いも、味間いも
葉物野菜：大和まな、千筋みずな、結崎ネブカ、大和きくな、下北春まな
果菜類：ひもとうがらし、紫とうがらし、黄金まくわ、大和三尺きゅうり、大和丸なす、黒滝白きゅうり
香辛野菜：小しょうが、花みょうが
その他：軟白ずいき

大和のこだわり野菜

大和のこだわり野菜は、「栽培や収穫出荷に手間をかけて栄養やおいしさを増した野菜や本県オリジナル野菜など」と定義されています。

朝採り野菜（レタス、なす、きゅうり、スイートコーン）
大和寒熟ほうれん草
大和ふとねぎ
香りごぼう
半白きゅうり

未指定の大和在来野菜

大和野菜として認定されていないものの、地域で大切に守り続けられている在来野菜も数多く存在します。これらの野菜は、それぞれの地域で独自の食文化を支え、貴重な遺伝資源として受け継がれています。

根菜類: 大和白上がり大根、今市かぶ、奈良阪ニンジン
いも類: 仏掌薯（つくねいも）、烏播（ウーハン）、紀州芋、ずいき小芋、洞川いも
葉物野菜: 大和細葱、ちしゃ、若草ほうれんそう、芭蕉菜
果菜類: 花丸きゅうり、大和小菊南瓜、千成かぼちゃ、銀まくわ、梵天瓜、越瓜（あさうり、しろうり）、大和西瓜、大和本長なす、ドイツ豆、十八豆
穀物: 粟
豆類: 大和一寸蚕豆、大和早生蚕豆、碓井えんどう、宇陀大納言小豆、宇陀大豆、大鉄砲大豆、在来青大豆、白トロス
香辛野菜: 大和当帰、野迫川沢わさび

大和野菜は、奈良県の豊かな自然と歴史の中で育まれた、地域固有の食文化を代表する貴重な財産です。これらの野菜を守り、次世代に伝えていくことは、地域の活性化にもつながる重要な取り組みと言えるでしょう。

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