結界師

結界師とは

『結界師』（けっかいし）は、田辺イエロウによる日本の漫画作品で、『週刊少年サンデー』にて2003年から2011年まで連載されました。本作は、結界師である主人公が、夜の学校を舞台に「結界術」を駆使して妖怪を退治していく物語です。

2006年度には小学館漫画賞少年向け部門を受賞し、2020年6月時点でシリーズ累計発行部数が1700万部を突破するなど、高い人気を誇っています。

あらすじ

物語の主人公は、400年続く妖退治の専門家である結界師一族に生まれた墨村良守と、隣家に住む同じく結界師の雪村時音です。彼らが守るべきは、妖を呼び寄せ力を高めるという特異な場所「烏森」。夜になると、烏森の地に建つ私立烏森学園に集まる妖を、二人は結界術で退治しています。

良守は過去の過ちから時音を大怪我させてしまったことを悔い、二度と仲間を傷つけないために強くなることを誓います。物語は、良守と時音が様々な敵との戦いを通じて成長していく過程を描いています。妖犬・斑尾の旧友である鋼夜との戦いや、夜行に所属する少年・志々尾限との出会い、妖の組織・黒芒楼との対決、良守の兄・墨村正守との葛藤、人の心を喰らう魔物・邪煉との共闘、戦闘用の妖・黒兜との死闘など、数々の試練が二人を待ち受けます。

そんな中、烏森に現れた巫女・サキによって、「恐れよ…血の臭い纏いし災いの神…この地に舞い降りん」という予言がもたらされ、物語は新たな局面へと進んでいきます。

登場人物

墨村 良守（すみむら よしもり）: 本作の主人公。結界師一族の正統継承者として生まれ、結界術を駆使して妖と戦います。お菓子作りが趣味で、将来はお菓子の城を建てることを夢見ています。
雪村 時音（ゆきむら ときね）: 良守の隣家に住む結界師で、良守とは幼馴染です。クールな性格で、良守とは対照的に、冷静に戦況を判断して行動します。
斑尾（まだらお）: 墨村家に仕える妖犬で、良守の相棒です。普段は可愛らしい姿をしていますが、戦闘時には本来の姿である巨大な犬の姿になります。
白尾（はくび）: 雪村家に仕える妖犬で、時音の相棒です。斑尾とは違い、冷静で落ち着いた性格です。

能力・術

結界術

結界術は、空間を支配する術であり、使用者を結界師と呼びます。通常、良守たちが使うのは「間流結界術」ですが、他にも神の領域干渉や絶界など、様々な結界術が存在します。

結界術は、道具を使えば誰でも扱えるものではなく、墨村家や雪村家のように空間の理を変化させたり、空間を作り出したりできる術者はごく稀です。

間流結界術（はざまりゅうけっかいじゅつ）: 墨村家や雪村家が使う基本的な結界術で、直方体の空間を支配するシンプルな能力です。結界の固さや粘度をコントロールしたり、特定の対象のみ結界の出入りを許可・禁止するなど、応用範囲が広いのが特徴です。

発動には「方囲（ほうい）」で標的を指定、「定礎（じょうそ）」で位置を指定、「結（けつ）」で結界を生成という3段階があり、発生した結界は「滅（めつ）」で内部を押し潰すか、「解（かい）」で解除します。

結界は、術者の熟練度によって強度や速度が変化し、結界の形も柔軟に変えることが可能です。また、結界を殴打武器として使うなど、応用的な使い方もできます。
念糸（ねんし）: 糸状の結界で、相手を捕縛したり締め付けたりする術です。良守は1本しか出せませんが、正守は両手から10本程度出すことができます。
切界（せっかい）: 他者の結界を破壊する術で、結界を斬るような動作で発動します。結界師の基本技能の一つです。
四師方陣（ししほうじん）: 4人の術者が協力して一つの結界を形成する術で、各人の連携が重要です。
絶界（ぜっかい）: 負の感情を高め、黒い球状の結界を形成して領域内のものを消し去る術です。正守が主に使用し、後に良守も使えるようになります。
探査用結界（たんさようけっかい）: 広範囲の妖などの情報を一気に洗い出す術ですが、情報量が多いため、式神などの補助が必要になります。
真界（しんかい）: 領域内を初期化し、術者の思い通りに空間を書き換える術です。良守が使用しますが、時守曰く、まだ初歩の段階とのことです。

封魔術

封魔術は、釘を使って魔物を封印する術で、使用者を封魔師と呼びます。封印の釘を打ち込むことで魔物と主従関係を結ぶことができますが、心を強く持たないと自分が喰われてしまう危険性もあります。

封術: 釘を使い魔物を封印する術。
破魔術: 釘を介して敵を吹き飛ばす術。

その他の術

まじない師: 呪力を用いてまじないを行う術者で、準備に時間がかかるため戦闘では援護が必要となります。
解呪師: 呪いなどを解く術者。
呪刻師: 呪いなどを刻む術者。
自然支配系能力者: 呪力によって特定の自然物や自然現象を操る能力者。風使い、植物使いなどがいます。
無想（むそう）: 心を無の状態にし、力の純粋な発揮を可能にする術で、良守や繁守が使います。極限まで高めると極限無想となります。
波同（はどう）: 時音が使う術で、壁抜けが可能になります。極限まで高めると空身になります。
式神（しきがみ）: 呪符に呪力を込めて作り出す使い魔です。墨村家、雪村家、奥久尼など流派によって紙の形が異なります。
修復術（しゅうふくじゅつ）: 壊れた物を呪力で修復する術です。
鬼使い（おにつかい）: 鬼と契約し使役する術者。
魔よけ（まよけ）: 星の形をした御札で、妖を避ける効果がありますが、強力な妖には効果が薄いです。
妖混じり（あやかしまじり）: 生まれながら妖の力を持つ人間で、身体の一部を妖に変化させて戦います。
箱使い（はこつかい）: 箱を使って空間を移動する術者。
管理者（かんりしゃ）: 自分の力を制御するために出す分身。良守、正守などが使います。
魂蔵（たまぐら）: 力が無限に蓄えられる体質。魂蔵持ちは、相性の良い共鳴者に力を分け与えたり、傷を治したりできます。
精神系能力: 精神を読み取る能力、精神を支配する能力などがあります。

舞台設定

烏森（からすもり）

烏森は、妖を呼び寄せ力を高める特異な場所で、間時守がウロ様から譲り受けた土地です。結界師一族によって代々守られてきました。烏森には意志があり、面白いものを好むわがままな性格です。

神佑地（しんゆうち）

霊山などのパワースポットで、大宮、中宮、小宮に分類され、一宮から三宮までランク付けされます。強力な神佑地は特別重要保護地として認定されています。神佑地は、神佑地狩りによって奪われる危険性があり、力を無尽蔵に蓄えられる魂蔵持ちが代わりに主となる必要性があります。

その他の舞台

無色沼（むしきぬま）: ウロ様の現在の住みかで、間時守によって作られた土地です。
黒芒（くろすすき）: 黒芒楼の本拠地であり、姫が主を務めています。
会羽山（あいばざん）: 烏森近辺で最も霊力の高い山で、黒雲斎が主です。
水龍の湖: 遠く離れた神佑地で、水龍が主です。
淡幽の神佑地: 正式名称不明。淡幽が主を務める土地で、ビルに二つの神社があります。
真白湖（ましろこ）: 北海道にあった神佑地ですが、何者かに消されてしまいました。
九州の神佑地: 九州にあった神佑地で、真白湖同様に消されています。
緋田郷（ひだごう）: 烏森の近くにある神佑地で、お地蔵様が主ですが、破壊されています。
夕上家の神佑地: 夕上家が代々守ってきた神佑地ですが、神佑地狩りに遭ってしまいました。
大首山（おおくびやま）: 東北地方の大一宮で、破壊されています。
嵐座木神社(あらしざきじんじゃ): 扇本家の裏山にある神社で、繭香が主でしたが、殺害されまほらが新たな主になりました。
覇久魔（はくま）: 裏会総本部がある土地で、最上級の神佑地です。

その他

無想部屋（むそうべや）: 無想の修行を行う場所で、墨村家の古井戸の先にあります。
波動部屋（はどうべや）: 雪村家に存在する修行場で、空身を会得するために訓練します。
断頭島（だんとうじま）: 裏会検察室の本部が置かれている島で、一ノ島、二ノ島、三ノ島に分かれています。
龍仙境（りゅうせんきょう）: 竜姫や水月の出身地で、妖混じりが生まれやすい土地です。

一族・組織

墨村家・雪村家: 間流結界術を使い、烏森を守護する家系。いがみ合っているが、それは時守の策略によるものでした。
裏会（うらかい）: 異能者たちを束ねる組織。
黒芒楼（こくぼうろう）: 烏森を狙う妖の集団。人間のような社会を形成しています。
扇一族（おうぎいちぞく）: 風を操る異能者の一族。裏会ではなく、扇一族に仕えている異能者も多くいます。
夕上家（ゆうがみけ）: 血を操る家系で、長子は神佑地を守護する役割を持っていました。
逢海兄弟（おうみきょうだい）: 精神支配系の能力を持つ兄弟で、精神を肉体に移し替えることができます。

妖（あやかし）

光を嫌い、夜を好む異形の者たちの総称です。土地神、人型、鳥獣型、虫型、植物型など様々な種類がいます。

土地神: 神佑地を支配する存在。人の常識が通用しない行動原理を持ちます。
人型: 人間並みの知能を持つが、狂気的な性格の妖が多いです。
植物型: 通常は動かないが、再生力が高く、中には知能を持った高等な妖もいます。
鬼: 妖の一種ですが、詳細は不明です。
戦闘型: 戦いを優先する妖です。
分類不能: 人工的に作られた妖や次元の違う妖など、上記に当てはまらない妖です。
魔物: 金剛が言う妖の別の言い方。邪煉が該当。

用語

天穴（てんけつ）: 結界師に伝わる武器で、妖の残骸を吸い取るために使います。墨村家と雪村家で形状が異なります。
だまし岩: 墨村家に伝わる修行用の岩で、実際は鉄球をコーティングしたものです。
人皮（ひとがわ）: 黒芒楼の妖が使う特殊な皮で、妖の気配を消します。
炎縄印（えんじょういん）: 志々尾限の体に施されている炎のような模様です。
異界（いかい）: 土地神クラスの妖が支配する領域で、通常の理とは異なる理を持ちます。
妖準石（ようじゅんせき）: 妖気を感知すると光る石です。
神佑地狩り（しんゆうちがり）: 神佑地の力を奪う行為で、魂蔵持ちを必要とします。
無想箱（むそうばこ）: 開祖・間時守が作った修行用の箱で、心を無にしないと壊せません。

読切

『結界師』には、連載前に2つの読切版が存在します。

増刊サンデー版: 烏森家の裏守である田中良守が主人公で、苗字が田中になっています。
* 週刊少年サンデー版: 連載版と同じ墨村良守が主人公ですが、設定に一部相違があります。

書誌情報

『結界師』は、全35巻の単行本と、全18巻の完全版が発売されています。詳細は上記参照。

メディア展開

2006年から2008年にかけてテレビアニメが放送され、ニンテンドーDSやWiiでゲーム化もされています。また、記念切手の題材にもなっています。

以上が、『結界師』の概要となります。

もう一度検索