統一I型

統一I型ビデオテープ規格について

統一I型は、1969年に制定された初期のビデオテープ規格です。当時のビデオテープレコーダーは、メーカーごとに異なる規格が乱立しており、互換性がありませんでした。この状況を改善するため、日本電子機器工業会が中心となり、規格の統一が図られました。

規格策定の背景

1960年代、各社が独自の規格でビデオテープレコーダーを開発・販売していました。ソニーが1964年に「CV-2000」、松下電器産業が1965年に「NV-1000」、ビクターが1966年に「KV-800」、東芝が1967年に「GV-1010」を発売しました。カラーVTRも各社から登場しましたが、1969年までは互換性がなく、映像の共有や再生が困難でした。

このような状況下で、1967年に日本電子機器工業会が「VTR調査委員会」を発足させました。そして、1969年に統一I型規格が合意に至りました。これにより、各社のビデオテープレコーダーでも、テープの相対速度を一定にすることで、記録・再生が可能になりました。ただし、カラーVTRの規格統一は1971年までずれ込みました。

統一I型の技術的特徴

統一I型規格のビデオテープレコーダーは、オープンリール式で、テープ幅は1/2インチ（12.7mm）です。主な特徴は、以下の通りです。

記録方式: 回転2ヘッド・ヘリカルスキャニング方式
テープ幅: 12.65mm（1/2インチ）
テープ送り速度: 137mm/s
相対速度: 11.9m/s
ドラム径: 127mm
リール径: 184mm（7号）
水平解像度: 白黒300本以上、カラー230本以上

これらの仕様により、メーカーが異なっていても、記録された映像を再生できるようになりました。

統一I型規格のビデオテープレコーダーと当時の状況

初期の家庭用ビデオテープレコーダーは非常に高価で、一般家庭には普及しませんでした。主に放送関係者や役者、歌手などの間で使われていました。この時期にオープンリールビデオで録画された映像は、現在では貴重な資料となっています。

当時の製造状況は、月産30～50台程度であり、正常に動作するものが数台程度でした。ヘッド部やテープ走行メカニック部が精密な部品で構成されていたため、輸送中の衝撃で歪みが生じたり、記録機器と再生機器が異なると、映像が乱れることもありました。そのため、熟練した技術者が設置に同行し、専用の拡大鏡を使って手作業で補正を行っていました。初期の機器は一台18kgもあったとされています。

発掘された主な番組

統一I型規格のビデオテープで録画された番組の中には、以下のようなものがあります。

てなもんや三度笠（澤田隆治提供）
ケンチとすみれ、連想ゲーム第5回、世界の音楽（宮城県の視聴者提供）
鞍馬天狗（1970年、瑳川哲朗提供）
巨泉×前武ゲバゲバ90分!（日本テレビ局内での録画）
樅ノ木は残った（柴田町郷土資料館）
男は度胸（1971年担当プロデューサーの提供）
銀河ドラマ『あほんだれ一代』（1971年、男は度胸のテープの消え残りより）
タイム・トラベラー（和歌山県の視聴者提供）
勝海舟（埼玉県吉見町教育委員会）
四つの目（眼科医の安達京提供）

これらの番組は、当時の貴重な映像資料であり、歴史的価値が高いとされています。

統一I型規格で録画されたテープの修復

NHK技研では、統一I型規格で録画された番組が発掘された際、テープの老朽化による再生不能や画質劣化に対処するため、最新技術を用いて修復を行いました。具体的には、以下の技術が用いられました。

テープポストを摩擦の少ないテフロン樹脂に交換し、テープ走行を安定化
トラック幅の狭い高感度ヘッドに交換し、テープの再生互換性を向上
D5-VTRなどに使用されているスリップリングを適用し、スパークノイズを除去
ヘッド回転機構をベルト式から直接駆動式に変更し、回転を滑らかに

これらの技術により、高画質な再生が実現しました。さらに、記録方式に依存せずにテープを再生できるストレージ装置の開発も進められています。

主な機種

統一I型規格に対応した主な機種は、以下の通りです。

ソニー: AV-3600、AV-3700、AV-3750、AV-5100、AV-5700、AV-8700（カラー）、AV-8750（電子編集装置付、カラー）
日本ビクター: KV-340（1970年）
松下電器: NV-3020（1969年）
日立: VT-1300H（1970年）
東芝: GV-211C（1971年、カラー）、インスタビデオ（1971年）
* 三洋電機: VTR-2000C（1971年）

これらの機種は、当時の技術力を象徴するものであり、現在では貴重なコレクションとなっています。

まとめ

統一I型規格は、ビデオテープの黎明期における重要な規格であり、その後のビデオ技術の発展に大きく貢献しました。現在では、この規格で記録された映像の修復やデジタル化が進められており、当時の貴重な映像が後世に伝えられるように取り組まれています。

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