統制型乗用車 (ドイツ国防軍)

統制型乗用車

統制型乗用車（Einheits-PKW）は、1936年から1943年までの間にドイツ国防軍が進めた軍用自動車の開発計画に基づいて製造された乗用車のことを指します。この計画の目的は、従来の民間自動車からの置き換えを通じてオフロード走行に優れた統一仕様の車両を整備し、メンテナンスの簡易化や部品の共通化を図ることでした。

背景と目的

1930年代初頭、ヴァイマル共和国軍において使用されていた軍用車両は、民間の乗用車をベースにしていました。これにより多様なメーカーから調達された車両は、オフロード性能や耐久性において、軍の要求に十分応えることができませんでした。さらに異なるメーカーからの部品調達により、部隊のメンテナンスが困難になっていました。

ナチス党の権力掌握を受け、軍の機械化にかけられる予算は増加し、1934年には軍用自動車の標準化が目的とされました。この取り組みにより、異なる車両クラス（小型、中型、大型オフロード乗用車など）が制定され、4×4の駆動方式と独立サスペンションを持つ車両が計画されました。

主要な車両クラス

統制型乗用車には以下の5つのクラスがあります：

1. 軽統制型乗用車（Leichter Einheits-PKW）
2. 中統制型乗用車（Mittelschwerer Einheits-PKW）
3. 重統制型乗用車（Schwerer Einheits-PKW）
4. 軽トラック（Leichter geländegängiger Lastkraftwagen）
5. 中トラック（Mittelschwerer geländegängiger Lastkraftwagen）

これらの車両は、ドイツ国内で製造される部材を使用し、共通性を高めることを目指しました。しかし、技術的な制約から完全な標準化は難しく、実際には多くの自動車メーカーが製造に関与しました。

製造と調達の課題

実際の生産にはBMW、ハノマーグ、オペル、フォード、アウトウニオンなど多くのメーカーが関与しましたが、それぞれのメーカーごとに独自のエンジンを使用したため、統合された生産体制を築くことはできませんでした。初めて納品された軽統制型乗用車が1936年にストゥヴァー社から届けられた後も、製造を続ける中で費用と生産の複雑さから、生産数量は計画通りにはいきませんでした。最終的に、ドイツ国防軍は必要な車両の60%を民間車両から調達することになりました。

性能と問題点

統制型乗用車は、重量があるゆえに燃費が悪く、またオフロード性能にも限界が見られました。さらには、製造コストの高騰や複雑な構造のため、多くの部隊からは「戦時任務には適さない」と評価されてしまいました。1940年に進められた「シェル計画」では、一部の車両の見直しや簡略化が行われましたが、根本的な問題の解決には至りませんでした。

各クラスの具体例

• - 軽統制型乗用車は、ストゥヴァー社やBMWによって製造され、約13,000両が生産されましたが、終戦時には9割の部隊から使用を避けられていました。
• - 中統制型乗用車は、ホルヒ901などによって21,000両が生産され、通信部隊や兵員輸送に使用されましたが、生産後もその使い勝手について不満が残りました。
• - 重統制型乗用車では、フォードとホルヒにより生産された車両が約9,000両が用意され、装甲兵員輸送に使用されました。

結論

最終的に、統制型乗用車の製造は1943年に中止されることとなり、代わりによりシンプルで低価格な車両が必要とされるようになりました。初期の計画が抱えていた多くの課題が浮き彫りになる結果となりましたが、当時の軍用自動車の発展に影響を与えたことは否応なく認められています。

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