統治二論

統治二論

『統治二論』（とうちにろん）は、1689年にイギリスの政治学者ジョン・ロックにより著された政治哲学の二篇からなる重要な書籍です。この著作は「統治論二篇」「市民政府論」などと呼ばれることもあり、政治理論における基本的な視点を提供しています。この本はアメリカ独立宣言やフランス人権宣言などにも大きな影響を与え、今日の自由主義の基盤を形成しました。

本書の構成

この著作は二つの主要な論文に分かれており、第一論と第二論から成ります。第一論には全11章があり、ロバート・フィルマーの王権神授説に対する反論が展開されています。第二論は全19章から構成され、政治権力の起源や社会契約について詳細に論じています。

第一論の詳細

第一論では、ロックはフィルマーが説く王権神授の視点に挑戦します。フィルマーは、アダムに与えられた支配権が王権の根源であると主張しますが、ロックはこれに反論し、アダムの権利は全人類に与えられたものであると指摘します。さらに、ノアの子供への言葉は父権とは無関係であるとし、アダムの血筋による支配権の継承には矛盾があることを述べています。

ロックは、これらの権威がただ一つの血統によって認められるという考え方は誤りであり、社会全体の合意に基づいて権力を形成すべきであると主張しています。さらには、絶対的な支配権は存在しないと論じ、その代わりに権力は社会契約に基づくものであると主張しました。

第二論の内容

第二論では、ロックは「自然状態」と呼ばれる概念について考察させ、そこでの人々の関係と、自然法に基づく自由を強調しています。自然状態においては、すべての人は平等であり自由である一方で、法的な秩序が欠けているために潜在的な争いが生じることもあると説明します。

また、ロックは所有権の概念を提唱し、労働によって生じたものであると述べています。彼は自然権の観点から、権利が侵害された場合には抵抗する権利があり、これは社会的な平和の維持にとって重要であると強調します。

実際の政治社会は、各人が持つ権利を守るために自然法を基に構築されるべきであり、そのために立法権や執行権が分離されることが重要であるとしています。これにより、権力の乱用が防がれるという考えが示されています。

結論

『統治二論』は、現代における政治思想の基盤となる概念を数多く含んでいます。ロックの提言は、個人の自由や権利を重んじる社会契約の重要性を再認識させ、その後の政治理論に多大な影響を与えました。

この著作は、政治哲学の重要な位置を占め、歴史的にも、その後の政治的運動や憲法の形成に寄与した内容となっています。私たちが今日またその教えをかみしめ、権利や自由の根源を理解するための指針となるでしょう。

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